第31話 厄災ノ終ワリ➂
学園祭当日――。
俺たち2年3組は無事参加できることになった。みんなのやる気ももちろんのことだが、凪沙や修人くんが先生たちに何度も掛け合ってくれたことが大きかった。
委員長たちが考えてくれた「メルヘンお化け屋敷」も完成させるのはギリギリだったが、なんとか思い描いていた理想の形となった。
「まわろうよ、彼方」
真白はみんなから「ゴーストシンデレラ」というメルヘンお化け屋敷のキャストを推薦され、黒いドレスを着て、お客さんが来たら驚かすという役を勤めていた。今、やっと空き時間になり、そのままの衣装で俺のところに来てしまったようだ。
「メイクは落として……からきてよ。怖いから……」
「ぅ……うん」
そういえば、で話すことでは決してないと思うのだが、俺と真白は付き合うことになった。「こんな時だからこそだよ~」とさくらさんが応援してくれたこともあり、俺は勇気を出して告白した。
ここから日常生活に戻る。そういう決意も含まれていたと思う。
「あ、修人くんとさくらさんだ」
「何だよ……」
「いや、相変わらず仲良さそうだなって」
「はい、ブーメラン」
「ありがとうって言っておくよ」
曇った表情をしている人はもう誰もいなかった。
2年3組は晴れてやっと日常を取り戻したんだ。
厄災は終わったんだ……。
楽しい時間はすぐに過ぎ去り、最後のキャンプファイヤーまでプログラムは進んでしまった。学校中のカップルが高く上がった炎を囲んでいる。
真白は目立つのは得意じゃないからという理由で最後の踊りには参加しなかった。
「あれ? 真白さんは?」
少し遠くから座って見ていたところに安土さんが話しかけてくれた。
「着替えてくるって。俺も歩き疲れたから少し休んでたんだよ」
「そ。平和だね。他のみんなは?」
「太志くんは全ての店の食べ物を食べたとか言ってあっちで寝転んでるよ。それに付き合ってた耕太くんと早瀬さんも。修人くんさくらさんカップルと未来くん朝比奈さんペア、碇くん如月さんペアはキャンプファイヤーのとこ。男組は恥ずかしそうに踊ってたよ」
「え!? 京香ちゃんと碇くんって付き合ってたっけ?」
「最近だよ。碇くんは意外と可愛い系が好きだったんだって凪沙が言ってた」
「剣持さんたちは?」
「凪沙と夜はレイナさんのとこ。レイナさん1人じゃ危ないからって3人で1日まわってたみたい」
「最強のボディーガードだね」
「ほんとに! みんな……日常に戻ったんだ、ね」
俺はポケットに入れていた儀式人形を手に取った。
「これはもう要らない……ね」
「……。本当にやるのか? 彼方。きみの手で……」
◇
厄災の終わり。
俺は、誰がクラスに混ざってしまった死者なのかを知った、その前日……。
クラスの男子だけを集めた放課後。
1つのお願いを聞いてもらった。
「もし、死者が分かっても……学園祭が終わるまでは何もしない。最後のプログラムの中で俺が密かにその厄災を払う。そうしたいんだ!」
みんなはその間に新たな犠牲者が出てしまうというリスクを頭にいれながらもその無理な頼みを聞いてくれた。この優しいクラスに転校してきて、本当によかったと俺は思った。
そして。
混ざった死者のことを考えたとき、少しだけ可哀想だと思ってしまった俺がいた。リスクを通してでもその厄災のケジメは最後に優しさとして終わらせたいとそのとき思ったのだ。
「それでもし、ダメだったら。未来くん……頼んだよ」
「いや、もう俺はお前を疑ってない。お前に全部任せたよ」
「ありがとう」
◇
「……。本当にやるのか? 彼方。きみの手で……」
「ああ。これが最後だ」
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