第26話 真実ヲ探シテ➀
次の日の夜。野上亮平と齋藤ひばりの葬儀が行われた。「ありがとう」と言いながら俺はそばに花を添えた。理不尽な厄災への怨でこれまでクラスに尽力してくれた2人を送り出すのは失礼だ、と碇くんが言ったため、葬儀は最後の最後まで穏やかに行われた。
「委員長とは実は長い付き合いだったんでしょ? 碇くん」
「あぁ……。ひばりともな」
「え!? そうだったの?」
「3人とも同じ幼稚園。俺は昔からこんな顔つきで実際悪ガキだった。……親がいなかった俺は悪目立ちしてでも、誰かに注目されたかったんだ。そんときに2人が話しかけてくれて、怒鳴ってくれたんだ。亮平は下に兄妹がたくさんいて、その頃から面倒見の良いお兄ちゃんだった。ひばりはなんでも理想が高いヤツだったために俺にああしろだの、こうしろだのお節介焼きなお姉ちゃんだった」
「じゃあ……碇くんは今日、」
「本当の家族を失った気分だ。悲しいし、寂しいが、まだやらなきゃいけないことがある。あいつらの分も俺たちは生きなきゃならねぇんだ」
「うん、そうだね」
「それと、俺はお前を疑ってない。お前からは2人と同じ、純粋すぎる匂いがするからな」
「……ありがとう」
外の空気を吸いに駐車場に出ると、白馬くんと美和くんが居た。
「何話しているの?」
「あぁ彼方か、ちょうどいい。これから一緒に学校に来いよ。お前はこっち担当だ」
「え? どういうこと?」
「いいからついてこい」
「え!? スーツのまま?」
俺は言われるがままに2人の背を追った。
◇
夜の学校。
轟轟とうねる風が外の木々を激しく揺らし、いつも以上の不気味さが漂っていた。
集まったメンバーは後から来た凪沙を含め計4人。
「ソレ、何に使うの??」
裏の体育倉庫からスコップやらハンマーやらを担いできた白馬くんに尋ねる。
「掘るんだよ。俺と修人くんで掘るから彼方くんは掘った土を校庭の端まで運んでくれないか? 凪沙くんは見張りを頼むよ」
「手短にな」
凪沙と分かれた男組は2年3組の教室にこっそりと外の窓から侵入した。中央にスペースを空けるように机と椅子をどかし、タイルの隙間に鋭利なピッケルを無理やり差し込み、ハンマーで強引に引きはがした。硬い土が露わになった。
「この場所……もしかして……」
「あぁ。幽夏に真司、委員長と副委員長……全員が同じ教室中央で死んでいる」
フラッシュバックした。
そうだ。厄災のルールのことや儀式、死んだ状態に意識が持っていかれていたのか、「2年3組の教室」よりも細かい「場所」を少しでも気にしたことはなかった。
なぜ地面なのかは説明できない。直感的な何かが俺たちにそう思わせたのだろう。
30分掘っては、周りのタイルを剝がし、ひたすら掘り進め、掘る穴がどんどんと拡がっていった。校庭に運んでいく土も既に少し目立ってしまうほどの小山ができてしまっていた。
「もう運ぶとこ、無いかも! これ以上校庭に持っていったら不自然だよ」
「なら京香に頼め。あいつの花壇が裏山に行く途中にあるから、その近くのスペースを借りよう。人手が足りないなら信頼できるヤツを呼ぶんだ」
俺は如月さんにそのことをメールで送ると、「いいよ、私も行く」とすんなり了解してくれた。退院してから少し山登りなどして鍛えていたつもりだったが、さすがにしんどくなってきた。俺は、誰かに助けを求めようとした瞬間、校庭に入ってくる人影が見えた。暗くて顔は見えなかったけど、あのシルエットは間違いない……。
「太志くん! どうしたの?」
「お腹空くだろ? さっき白馬くんからメール貰ったんだ~。お葬式の後、体操着に着替えて急いで来たぞ!」
「百人力だよ!」
俺は腰をベンチに落とし、おにぎりを頬張った。気づいたら、靴や下のスーツは泥だらけになっていた。
「コレ……徹夜コース……?」
「美和くんも白馬くんも頑張り屋だからね~」
「でも朝までには教室を元に戻さないと、いろいろヤバい……かも」
「それは大丈夫! 委員長と副委員長が最後に遺してくれたモノがあるからね」
「……?」
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