第13話 謎ノ再開➀
昨日の南姉妹とのお買い物が無事に終わり、無事に俺の財布も終わった。
あの後の帰りのバスの中でまた新しく生まれた謎が1つある。カバンの下の方が妙に濡れているなと思って中を見ると、安土さんの儀式に使っていた藁人形が入っていたのだ。微かに塩の香りがして濡れていたため、あの儀式に使ったもので間違いないだろう。あの神社に置いてきたはずなのに……どうして。
「ちょっと来て!」
「あ、安土さん! ちょっと、」
俺は手を引かれながら外庭の人気のない所まで連れてこられた。
「どうしてあの藁人形を持って帰ったの?」
「う、奪った!? 違うよ! なんか勝手に入ってて……」
「人形が独りでに動いたとでも言いたいの?」
「……」
「とにかくそれは神社の鳥居の置いたところに返してね。今日か明日の放課後でいいから」
「分かったよ。1つ聞いていい?」
「?」
「この藁人形さ、他になんか力があったりするの?」
「全く無い、とは言えない……。昔からある儀式だからよく知らないの。じゃあね」
昔からある儀式、か。
ということは調べれば何か分かるかもしれない。
厄災のこととは関係ないかもしれないけど少しでも気になることがあったら調べるという癖が俺はついてしまったようだ。
昼休みになり、俺はご飯を食べずになるべくたくさんの時間を使って図書館を調べることにした。
――――――――
前の学校よりも遥かに大きな図書館だった。ありふれた児童文学に分厚い有名ミステリー小説、難しそうな新書、さらには卒業生のアルバムまでがずらっと並んでいた。
俺は、卒業アルバムが気になり手を伸ばしそうになったが目的の安土町関連の本を探すことにした。
「安土町関連の本は児童書の所に置いてあるぞ」
そう声をかけてきたのは同じクラスの未来賢人くんだった。流石科学部と言うべきか、手には今話題の人工知能AIや新物質の本がある。
「ありがとう、未来くん」
「そんなことしてる暇、もうないかもな……彼方くん」
「へ?」
「中村が死んでからまたクラスの流れが変わった。そりゃそうだろ! それまでの仮説が崩れ去ったんだからな」
「なんのことだ?」
俺たち以外に誰もいない図書館。彼の自信ありげな声が真っ直ぐに俺の耳に入ってくる。
「俺は科学部だけど、そういうものを信じる派だった。それを信じたうえで何か否定できる材料を発見したかったってのもあるが……俺は面白い方が好きってのが本心だ」
「未来くんは委員長側だったのか。中村くんが死んで……それで、やっぱり意見が変わったってことか?」
「少し違う……新たな仮説が生まれたのさ。俺たちは安土の儀式を信じていた。いや、まあ俺は実際にしばらくの間その効果があったことでやっと信じたんだけどな。まあそれはいいとして……少し状況を整理しようか」
未来くんはあくまでこれから話す際の視点が安土さんの儀式の効果が有るものとして話を進めた。
中村が死んだことはイレギュラーだった。儀式は毎日正しく行なわれていた。そこから導き出される――。
新たな仮設。未来くんは人差し指を俺の方に向けた。
「死人がもう1人増えた」
すぐに言葉が出なかった。
でも。
そういうことなんだと強引に答えを導き出せた。
つまり、俺が転校して2年3組に入ってきてしまった新たな死人……?
「そんなわけないだろ!」
「あ、気づいちゃった? 意外と賢いね、君。でも君だとは言ってない」
「え?」
「安土さんの儀式……生を死と変換できるなら、その逆も……。つまり、剣持たちと同様にまた別ベクトルの犯人捜しが始まるってわけだな」
「そのこと、他のみんなには?」
キーンコーンカーンコーン♪
「っ今すぐ言おうと思ってるならもう少しだけ待ってくれ。もっと納得する仮設を見つけてくるから!」
「それは楽しみだね!」
昼休み終了のチャイム音が校舎全体に響き渡り、俺たちは急いで話を切り上げて渋々教室に帰ることにした。
「今みんなにそんなこと言ったら、クラスはもっと混乱する。お前、頭良いからわかるだろ?」
「お~煽るねぇ~~。タイムリミットは……分かるね?」
タイムリミット……。頭が回って口がうまい未来くんのことだ。おそらく、次の犠牲者が出てしまうまで……ということになる。そんなこと考えたくないがそういうことだろう。
その後の午後の授業はどれも頭に入らなかった。
そんな中。
「みんなともっと話してみれば?」俺はかつてのお母さんの言葉。この一言だけを何故かこのタイミングで思い出していた。
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