依代の歩き方
はいんじん
第1話 私の媚び方
「最近誘拐多いから、気をつけてね」
私、咲は母親にそう声をかけられながら玄関でお弁当を渡される、それに対して「もちろん、わかってるよ」と言い家を出て学校に向かう、これが咲の日常だった。
私の住む街は都会というにはあまりにも建物がたっておらず、しかし田舎とも言い切れないなんとも微妙な所だった。
今日は天気が良く、早朝のために街はまだ静けさを帯び、空の青に染まり切っている、いつもと同じ道を通り、自転車を手押しで坂を登っていく、すると
「おはよーっサキちゃんっ!」
と、後ろから明るく高い声が聞こえる、「おはよう、カナ」と言い後ろを振り向くとさきの親友、加奈がにしっと満面の笑みで手を振って近づいて来た。
「サキちゃん今日の英語のテスト、大丈夫そ?」
「昨日単語覚えて来たから大丈夫だよ、カナは?」
「私はちょっとヤバいかも…サキちゃん教えてよぉ」
「ふふっ、いいでしょぅ!」
私たちはたちはそんな会話をし、笑いながら一緒に歩き学校まで向かった、空は変わらず私たちや街を青く染めていた。
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昼休みに入り、教室から出て購買に行く人、喋る人といる中、私はカナと一緒にお弁当を食べながらテストの出来を話していると、カナは改まった顔をして私にあることを話して来た。
「サキちゃんは神隠しって知ってる?」
「あぁ、誘拐の件の事?噂で誘拐ではなく神隠しとか言われてるそうね、」
「そうっ、!神隠しにあった子は神の依代にされて人でなくなってしまうんだって、!」
カナは自分が言ったことが怖くなったのか「ひえーっっ」と弱々しい声を出しながら目をバッテンにさせ足をジタバタしだした。
「でも実際に誘拐された子たちは行方不明になって見つかってもいないし、嘘だと思うけどね」
私はそう言って涙目のカナをあやしていると昼休みが終わり、冬休み前ということで四限しかなく、すぐに下校時間となった。
カナは帰りが車の為、学校の校庭で「また明日ね!」と言い合って解散し、私は一人で朝来た道を戻っていく。
(せっかくだし寄り道していこうかな)
いつもは学校をでて少しすればY字道路を右へ曲がるのだが、左に行って少し先の路地を進めばずっと坂道で自転車で滑ると風を感じれて海も見える、私のお気に入りの道がある。
今回は天気もいいということもあり、私はそっちの道から行くことにした。
「あれ?行き止まり?」
左に曲がり路地に入ったもののいつも通る道はなく壁で塞がれていた、咲は入るところを間違えたのかな?と思い、引き返そうとした。
(でも、こんかとこあったかな?)
今まで16年間この街に住んできているというのに、通る道なのにこの壁を、行き止まりを見たことがない。
(通られないように作られたのかな?)
と思ったものの、それにしてはあまり最近に作られたと思うほど綺麗でなく、どちらかというと何年もここにあったと言われたら納得するようなほど傷んでいた。
「まっ、考えても仕方ないかあ、引き返そ、」
私はそう言いY字通路に戻ろうと後ろを振り返ると
なぜか今まで見てきた道路はなかった。
「えっ!?なんで!?何処!?」
正確にはそこには今まで見たことのある通路はなく、あたりは真っ暗で足には10センチ程度の深さの湖ができており、目の前には神社の門があった。
そこに暖かさはなく、ただ暗く、まるで異世界かと思うほど異常で、しかし何処からきたかわからない光に反射された湖が輝いており神秘的にも感じた。
(ここって、私がいていい所じゃない感じがする、神隠し、?本当だった、?)
咲は直感で理解した、ここは居ていい場所じゃないと、気持ち悪くないのに吐き気がする、なんとも不気味で綺麗で汚くて美しくて、
「後ろの壁も無くなってる、、どうしたらいいの、、」
「だれか、、助けてよ、、」
咲はどうしたらここから出れるかわからずへたり込んでしまう、辛くないのに涙が出てきて精神が不安定になっていた、それほどに本能が逃げろと叫んでいた。
「助けて」「たすけて」たすけて」「逃がさない 人間が 依代にさせろ たすけろたすけてだと?ぼくもたすけてよたすからない死ぬみんな死ぬ死ぬ知ってる」
咲の耳元でそんな声が聞こえた、幻聴だ、助けてがこの暗闇に反射して聞こえただけだ、そうに違いない、そう咲は自分に言い聞かせる、しかしそれは違うというように声は大きく聞こえ、それに答えるように湖は表面が揺
れ水面が立ち暗闇からは金切音が聞こえた。
しかしその中に1つ
「おいで」
そんな声が聞こえたきがした。
「神社においで、僕が助けてあげる」
私はこの声がなになのかすら考える余裕もなかった、ただ安心感だけがあった、そう思いたかった、藁にでも縋りたかった。
立てずに四足歩行になりながらも神社に向かった、神社は古く錆び、色んなところが朽ち果てていた、もうすぐ壊れそうなほどに。
「賽銭箱に手を入れて、その中にあるのを引っこ抜いて」
私に考える余裕はなく、ただひたすらに手を賽銭箱に入れてその中にある何かを引っこ抜く。
それはくたびれてぐちゃぐちゃになったお札で、手にぬめりとした気持ち悪い感覚で思わず顔をしかめる。
「あっ、、あっあっ、、」
暗くてよく見えないが引っこ抜いたそれから出てきたのは蛇のような硬い鱗を持っており体の至るとこに目がついており大蛇のように大きい何かだった。
「生きたいと叫べ」
至る所にある目がニヤリと不気味に歪みながら【ナニカ】はそう言った。
「生きたい!!死にたくないっ、、!!」
咲は迷わなかった、というより迷ったらもう戻れないと思った。
「契約だ、僕を君に住ましてよ」
そう言ってその[ナニカ]は目を三日月のようにして笑い
シュッっと風を切る音が鳴った。
「、、え、」
自分の顔から血が滴ったのに気づいたのは、その風を切った音の正体がわかってからだった、それは尻尾のような何かで、それが私の顔を貫き穴を開けたと気づいた頃には絶命していた。
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