俺だけ✨宝箱✨で殴るダンジョン生活
双葉鳴
事実、宝箱は開けるより殴る方が得!
第1話 幼馴染
俺の名前は
攻撃力が一切無いことから【ハズレ】と称され、探索者としての夢を絶って生きている日陰者だ。
在学中は空気のように他者と関わらずに生きていた。
その理由は、ステータス関連を聞かれるのが嫌だったからだ。
探索者としてデビューしてない時点で察してほしいものだが、自分より弱い奴を見つけてマウントを取りたがる奴も少なからずいる現代。
俺のステータスは幸運を除いて一桁。泣けるだろう?
しかしそんな俺を放っておいてくれない存在が居た。
当時は俺の後ろにひっついてくるタイプの頼りない男だったが、どんな心境の変化か、今や昔の面影は一切ない陽キャへと変貌していた。
そんな慎がだ、ただ幼馴染ってだけでやたらと俺に絡んでくる。
心底やめて欲しかった。俺とお前が一緒に遊んでたのは小学校の時までだろ? 中学で学力で差が開き、高校で探索者として華々しくデビューしている人気者。
方や人目に触れず、教室の空気とかしてる日陰者。
水と油だ。俺を貶める以外の理由があるならぜひ提示して欲しいものだ。
が、向こうは俺を諦めない。ほんと勘弁してほしいよ。
「頼忠、ダンジョン行こうぜ!」
「なんで俺なんだよ。探索者デビューしてない時点でお察しだろ?」
それで引き下がるのならどれだけ良かったか。
こいつは昔の謙虚さを小学校に置き去りにしたかのように俺に付きまとう。
「そういうこと言うなよ、お前のスキルが必要なんだ。母さんから聞いたぜ? ステータスが低い代わりに宝箱のアイテムが二個ゲットできるって。まさに俺の求めてるスキルがそれでさ、頼むよ!」
親父め、余計なことをおばさんに吹き込みやがって。
確かにこいつのおばさんとうちの親父はご近所さんという以上に親しい付き合いをしているな。母ちゃんは浮気を心配しているが、アリバイ作りは完璧なので
「飯狗、あんた慎君のなんなわけ?」
自称彼女の要石カガリ《よういしかがり》俺と慎の関係に食いついてくる。そりゃ陽キャと陰キャ。接点があまりにもなさすぎる。
知り合いというのも烏滸がましいと言いたげだ。
だから距離を置いてんのに、向こうからズンズン詰めてくるんだもんよ。
「家が近所だっただけだよ。つっても遊んでたのは小学校までだぜ?」
「幼馴染? ウッソ、なんであんたなんかが慎君の幼馴染ポジションに居んのよ、替わりなさいよ!」
「生まれた場所までは不可抗力じゃね? なんで俺が怒らなきゃなんねーんだよ。慎も慎だ。なんで今更俺に構うんだ。もう終わった関係だろ?」
「つれないこというなよ。俺とお前の仲じゃないか。頼むよ、頼忠。俺はお前についてきてほしいんだ」
こいつ、俺の前で土下座までしやがった。
クラスの視線がいっぺんに俺に集まる。
こりゃここで断ったら今後の学園生活終わるな。
それくらいの殺気。
本当なら辞退するのがベストだが、ご本人がここまでするのだ。
俺が行かなきゃ気が済まないだろう。
「分かったよ。でも俺のステータスは最弱だぜ? 荷物くらいは持つけどさ、モンスターの盾にされたら余裕で死ぬからな?」
「モンスターの相手は俺に任せてくれよ。みんなもそれで良いかな?」
「慎君が言うなら仕方ないわね」
「えー、こいつ連れてくのー? 絶対足引っ張るわよ?」
「意義なし」
こうして俺は諦めかけていたダンジョンへと潜る事になった。
◇◆◇
時はあっという間に流れて日曜日、LIMEで流れてきた時間より30分早く到着する。
あいつらの事だ、遅れたやつは全員の荷物を持てとか言いかねない。
中学時代の慎の天狗っぷりは凄いものだと聞く。
小学校の時はまだ可愛げがあったのに、いつからあいつは捻くれてしまったのだろうか。
「頼忠、もう来てたのか」
集合時間ちょうどに慎がくる。
探索者だからって、重装備というわけではなさそうだ。それでも高校で見るよりも異様な風貌。
全身黒い装備を身に包み、腰にはダガーを数種類。
ベルトに繋がれたポーチには見慣れぬ薬品が封じられていた。
紛う事なくテレビで活躍している探索者の姿であった。
「おう。初めてだらけで心配だったからな。女子連中は?」
「LIMEでは今向かってるらしい」
すでに集合時間は過ぎていると言うのに、女子達は気楽でいいね。
「遅れてごめんなさい、飯狗、荷物はお願いね?」
称号時間から30分遅れて女子達が集合。
当然のように俺が荷物持ちとなった。
無能スキル持ちなのに、どうして女子達は荷物が多いのか。
中にはバッチリメイクしてきている奴もいる。
ダンジョンに何をしに行くのか。
俺はそれが不思議で仕方がなかった。
駅から電車に乗る事3駅。
俺たちは初めてダンジョンのある施設へと足を運んだ。
ダンジョンは金になるため、近隣施設を買い取って専用マーケットが入り込む。
ダンジョンゲートには当然受付もあり、そこで入る人員の名前と電話番号を書き込んだ。
帰りが遅い場合、両親へ連絡して捜索隊を出すかどうかを決めるらしい。
「それじゃ、行こうか。戦闘は俺が受け持つから、みんなは影から攻撃してレベル上げしよっか?」
「流石慎君!」
「飯狗と違って気が利くわ」
なぜ比較対象に俺を出すのか。
これがわからない。
Dランク探索者と一般高校生。
何がなんでも慎をヨイショしたいようだ。
本日のチーム構成はこうだ。
前衛に漆戸慎【フレイムトーチャー】
後衛に俺【+1】
要石カガリ【洗浄】
春日井小波【トーチ】
狭間ひとり【合成】
計5名。
漆戸の【フレイムトーチャー】は言わずと知れた火炎魔法使い。
武器にも魔法付与ができ、万能型だ。
防御時に対象を火だるまにしたりと攻防において隙がない。
漆戸が高校生でありながらDランクに至れたのはこのスキルの影響もあるだろう。
俺の【+1】は低確率で行動が一回追加されると言うもの。
正直使った事があるのは懸賞やらくじ引き、自販機のアタリくらいなので推して知るべきだ。
要石の【洗浄】は怪我をした傷口を洗ったりできるそうだ。潔癖症の彼女らしい。ただし熟練度が低い為、手の触れる範囲が精々だそうだ。隙を見て慎にボディタッチするのに最適かもな。
春日井の【トーチ】は懐中電灯ぐらいの光量を周囲一体に反映させるようだ。ダンジョンは低階層ほど暗く、アリの巣のように入り組んでいる為、抜擢されたようだ。
ただし本人が強く光る為、モンスターから標的にされるらしい。下手すれば囮にされかねないが、俺が居るので本人は余裕の表情である。
狭間の【合成】は素材と素材を合わせてまた別のアイテムに作り替えるものだそうだ。
ただしゴミとゴミを合わせても、ゴミにしかならない為、無能として世間では扱われている。
彼女は要石や春日井と違い、俺にそれほど嫌悪感を抱いてないのが唯一の救いだな。
ただし俺に対しても無関心を貫くので中立か。
女子二名とは表面上仲良くしてる感じ。
俺の悪口は言わないが、手助けもしてくれないので仲間と考えると痛い目を見そうだ。
こうして初めてのダンジョンアタックは慌しく始まった。
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