第3話 真実を知った二人は悶える(※両視点あり)
リュート・アークライトとして生きてきて15年。
今日は、これまでの人生で最も衝撃的な一日だった。
前世の記憶を思い出した。
しかも、婚約者も同様だった。
「まさか、
クレハと会い、お互いに前世の記憶を思い出したと打ち明けた日の夜。
俺は自室のベッドで仰向けに寝転んで、今までのことを思い出していた。
5年間クラスメイトで、なんだかんだ一緒にいることが多かったけど、いつも口喧嘩ばかりしていた犬猿の仲の腐れ縁、
前世でいがみ合っていた俺たちではあったけど。
「……実は好きだったんだよな、紅羽のこと」
そう。前世の俺は、種崎紅羽のことが好きだった。
でもなんとなく恥ずかしかったり、向こうが何かと突っかかってきた結果、素直になれずに言い合っていた。
記憶が蘇ってすぐ、心残りだったのは紅羽に気持ちを伝えられないまま死んだことだったが……二人揃って転生していたとは驚きだ。
「やっぱり、同じタイミングで事故に遭ったからか……?」
あの時紅羽も死んでしまったのは、残念だ。
けど、考えようによっては、役得かもしれない。
「前世で好きだった相手が、転生したら婚約者って……悪い話じゃないよな。なんだったら今も大好きだし」
紅羽=クレハだと分かったら、更に好きな気持ちが強くなってきた。
転生しても一緒とか、何か運命的なものすらあるんじゃないだろうか。
一つ、問題があるとすれば。
「前世では俺の完全な片思いだったんだよなあ……」
日常的に口喧嘩していただけあって、紅羽の方からは好意的なそぶりは一切見受けられなかった……と思う。
下手したら、嫌われている可能性だってある。
転生してからは仲の良い婚約者として一緒に生きていたが……記憶が蘇ったら、話が変わってくる。
「最悪の場合、振られるかも……!?」
婚約解消。
それだけは、避けなければ。
俺は前世の紅羽も、今のクレハも好きなんだから。
「でも、明日からどんな顔して会えばいいんだ……」
喧嘩していた前世の記憶といちゃいちゃしていた今世の記憶が混ぜ合わさって、極限の羞恥心を生み出していた。
頭を抱える俺だったが、その夜答えが出ることはなかった。
○
クレハ・フラウレンとして生きてきて15年。
今日はこれまでの人生で、最も衝撃的な一日でした。
前世の記憶を思い出しました。
しかも、婚約者も同様でした。
「まさか、
リュートくんと会い、お互いに前世の記憶を思い出したと打ち明けた日の夜。
私……クレハ・フラウレンは、フラウレン家の屋敷にある自室のベッドにいました。
枕を抱きしめながらうつ伏せになって、今までのことを思い返します。
5年間クラスメイトで、何かと一緒にいる機会が多かったけど、いつも口喧嘩ばかりしていた犬猿の仲の腐れ縁、
前世でいがみ合っていた私たちではありましたが。
「……実は私、竜斗くんのこと好きだったんですよね」
そう。前世の私は、大白竜斗のことが好きでした。
でもどこか恥ずかしかったり、彼が何かと突っかかってきた結果、素直になれずに言い合っていました。
記憶が蘇ってすぐ、心残りだったのは竜斗くんに気持ちを伝えられないまま死んだことでしたが……二人揃って転生していたとは驚きです。
「やはり、同じタイミングで事故に遭ったからでしょうか……?」
事故に遭う直前、竜斗くんが私を庇うように抱きしめてくれたことは、昨日のことのようによく覚えています。
結果として、あの時は二人とも死んでしまいましたが……不謹慎ながら、最期に少しだけ良い思いができました。
それはともかく、今回のことは考えようによっては役得かもしれません。
「前世で好きだった相手が、大好きな婚約者に転生していたなんて……これはもう、奇跡とか運命の類に違いありません……!」
竜斗くん=リュートくんだと分かったら、好きな気持ちがいっそう強くなってきました。
ただ、一つだけ問題があるとしたら。
「前世では、私の一方的な片思いだったんですよね……」
日常的に口喧嘩していただけあって、竜斗くんの方からは好意的なそぶりは一切なかった……はずです。
もしかしたら、疎ましく思われていた可能性だってあります。
転生してからは仲の良い婚約者として過ごしてきましたが、記憶が蘇ったとなると、話が変わるかもしれません。
「最悪の場合、振られてしまうかも……!?」
婚約解消。
それだけは、避けなければ。
私は前世の竜斗くんも、今のリュートくんも好きなのですから。
「でも、明日からどんな顔して会えばいいんでしょう……」
喧嘩していた前世の記憶といちゃいちゃしていた今世の記憶が混ぜ合わさった結果、とてつもない羞恥心が生み出されます。
胸が締め付けられる気持ちを抱えながら、両足をバタバタと上下させる私でしたが……その夜答えが出ることはありませんでした。
◇◇◇◇
どうもりんどーです。
本作をお読みいただきありがとうございます。
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