第37話 面会
「大きな屋敷ですね」
「はあ」
カノンは屋敷の中をきょろきょろと見まわした。
古びているけれど、手入れが行き届いているのか、汚れた感じはしない。
窓は多くもなく少なくもなく、ちょうどいい感じだ。
カノンは応接室に案内された。
「こちらでお待ちください」
「はい」
応接室には若い女性の肖像画と、前国王デリックの肖像画が並べて飾られている。
「この女性……」
カノンは肖像画の女性がライラ・クロークによく似ていると気づいた。
カノンが肖像画をまじまじと見ていると、ドアが開き初老の男性が部屋に入ってきた。
「お待たせしました。デリック・アストリーです。カノン……君ですね?」
「はい、カノン・ハリスです。本日は急にお尋ねして申し訳ありません」
デリックはカノンの胸元で光るペンダントを見て、苦いものを口にしたような顔になった。
「君は……ハリス家で育てられたんだね」
「はい」
「とりあえず、座ってくれないか? 話を聞こう」
デリックはカノンに、部屋の中ほどに置かれているソファの片方に座るよう促した。
「紅茶を頼む」
デリックは召使に言った。
「はい」
召使は部屋から出て行った。
デリックはカノンの向かい側のソファに腰かけると口を開いた。
「それで、君は何が知りたいんだい?」
デリックの目が優しく細められる。しかしカノンには、その目の奥に凍えるような冷たい光が見えた気がした。
「ハリス夫妻は……僕の本当の両親ではありません」
「ふむ」
「……あなたが、僕の本当の父さん……なんですよね?」
緊張で握りしめたカノンの手は指先が白くなっていた。
「何故そう思う?」
デリックは静かな声でカノンに問いかけた。
「手紙を読みました。それに、父さんと母さん……ハリス夫妻から話を聞きました」
「そうか」
召使が紅茶を持って部屋に入ってきた。
デリックとカノンの前に、熱い紅茶の入ったティーカップが置かれる。
「冷めないうちに飲むと良い」
デリックは紅茶を一口すすり、ため息をついた。
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