第27話 エリス先生の授業

 「今日は調律魔法の歴史について説明します」

 エリス先生が黒板に文字を書いた。

「と、言っても調律魔法が発見されたのはここ100年くらい。そう、調律魔法は新しい魔法なんです」

 カノンは驚いた。


「先生、調律魔法はなぜ急に現れたんですか?」

 思わずエリス先生に質問すると、エリス先生は困ったように笑って返事をした。

「そうね、なぜかしらね。実は、よくわかっていないの」

 エリス先生は黒板に『100年前、何があったのか?』と書いて前を向いた。


「100年前は、大きな戦争がありました」

 ミランが手を挙げて、堂々と答えた。

「そうね。その時、悪い王様を倒したのが調律魔法士だったの」

 エリス先生の言葉を聞いて、カノンは首を傾げた。

「悪い王様って?」


「カノン、授業でやったじゃないか。先々代の王は、重い税を課し、国民を苦しめてたって。ま、何も聞いていなかったのかな? カノンちゃんは」

 ミランがあざける様に言ったので、カノンはむっとしたが、黙って聞いていた。

「ミラン、その通りですがクラスメートを馬鹿にするような発言は良くありませんよ?」

 エリス先生がそう言ったので、カノンはよけいに恥ずかしい気持ちになった。


 授業が終わってから、エリス先生がカノンに声をかけた。

「カノン、君は将来、国に仕えるつもりなの?」

「エリス先生……なんでそんなことを聞くんですか?」

「ちょっとね、気になっただけよ」


 エリス先生が教室を出ていくと、ベンジャミンがカノンに話しかけた。

「カノン、何かしたのか? エリス先生と何をしゃべってたんだ?」

「……何も」


 カノンは教室を出るとベンジャミンとアデルに言った。

「今日の放課後、図書館に行こう」

「……いいぜ」

 ベンジャミンがにやりと笑った。

「大丈夫かしら……」

 アデルは不安げにつぶやいた。

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