第26話 噂

「あの、私、お母さんから昔ちょっとだけ聞いたけど、あんまり覚えてないの」

 アデルは申し訳なさそうにカノンに言った。

「そうか、わかったよ。アデル、ごめんね」

 カノンはそういうと朝食に手を伸ばした。

「いただきます」

 ベンジャミンとアデルも食事を始めた。


「なあ、確か、追放になった調律魔法士の記録が図書館の禁書コーナーにあるって話をきいたことがあるぜ?」

 ベンジャミンがパンを食べながら、小さな声で言った。

「本当!?」

 カノンはベンジャミンのほうを見た。ベンジャミンは頷いた。


「それじゃ、放課後になったら図書館に行ってみるよ」

 カノンが言うと、アデルが慌てた様子で言葉をはさんだ。

「でも、禁書のコーナーには低学年は入れないんじゃないかな?」


「そこ! おしゃべりに夢中になっていると、食事の時間が終わりますよ?」

アラン先生がカノンたちを注意した。

 カノンたちは慌てて食事を終わらせると、食器を片付け、食堂を出て行った。

「放課後、一緒に図書館に行こうよ」

 カノンはベンジャミンとアデルを誘った。


「ああ、いいよ」

 ベンジャミンはにっこりと笑って返事をした。

「……うん」

 アデルは少しうつむいたまま、気の乗らない様子で返事をした。

「さあ、授業に行こう。最初の授業はユーリ先生の調律魔法学だ」

 ベンジャミンが先頭を歩いた。

「待ってよ、ベンジャミン」


 カノンとアデルも調律魔法学の教室に向かって歩き出した。

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