第11話
教室に戻ると、アラン先生が教卓についていた。
「皆さん、授業初日はいかがでしたか? 本日はこれで授業終了です」
クラスメートはざわざわと授業の感想を話していた。
「カノン、お疲れ様」
「ベンジャミン、お疲れ様」
ベンジャミンはカノンに向かってはにかむように笑った。
「魔法はむつかしいな」
ベンジャミンがため息交じりに言った。
「ああ、そうだね」
カノンは今日一日、ちっとも授業で上手にできなかったことを思い出してため息をついた。
「食事の時間まで、遊ばないか?」
ベンジャミンの誘いを聞いて、カノンは少し思案した後、首を横に振った。
「僕、授業の復習をするよ」
「真面目だなあ」
ベンジャミンはカノンから離れると、ほかのクラスメートと校庭に向かっていった。
「カノン、貴方も復習するの? 良かったら私と一緒に勉強しない?」
弱弱しい声でアデルがカノンに声をかけた。
「アデル……いいよ。一緒に勉強しよう」
カノンはアデルと中庭に向かった。
中庭に着くと、カノンとアデルは授業で習った呪文を練習した。
「ファイアボール!」
「ウォーターボール!」
カノンの手からはほんのわずか、炎のようなものが放たれただけだった。
アデルの手からは水が矢のように飛び出している。
「ああ、やっぱりうまくいかない」
カノンはがっかりした声を上げた。
「大丈夫よ、カノン。私だって……練習したらうまくなっていったわ」
アデルは『ファイアーボール』と唱えた。火の玉が、前方に生えていた木にあたって消えた。
夕方の鐘が鳴った。
「カノン、そろそろ夕ご飯の時間だわ。食堂に行かなきゃ」
「そうだね」
カノンは結局、練習の成果をあまり得ることができないままアデルとともに食堂に向かった。
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