第10話

 次の授業も基礎魔法の練習だった。

 カノンは土、風の魔法も使えなかった。水の魔法を唱えたとき、かろうじて小さな水滴が現れただけだった。

「カノン、この学校に何を学びに来たんだ?」

 クラストップのミランがカノンに笑いながら言った。


「……魔法にきまってるじゃないか」

 カノンは小さな声で答えた。

 ミランは鼻で笑ってから、カノンから目をそらした。

「カノン、気にしないほうがいいぜ」

 ベンジャミンがカノンを励ました。


「みんな、がんばっているかな?」

「クリス校長先生!」

 クラスのみんなが校庭に現れたクリス校長を見つめた。

「……」

 カノンはうつむいて、地面をじっと見つめた。

 クリス校長がカノンに近づいて言った。

「君は……苦戦しているのかな? でも、大丈夫。この学校に呼ばれたということは、魔法の才能があるということだからね」

 カノンはクリス校長の顔を見た。クリス校長は優しく微笑んでいる。


「さあ、みなさん。授業に戻って!」

 カノンはアラン先生の声を聞いて、前を見た。

「ウォーターボール!」

 カノンの両手の中に小さな水球がふわふわと漂っている。

「それでは、失礼する」

 クリス校長が校舎に戻っていった。


「明日は魔力増幅の練習を行います」

 アラン先生はそう言うと、授業を終わりにした。

「疲れたな、カノン」

 ベンジャミンがカノンの肩を軽く叩いた。

「……うん」


 カノンは教室への道をとぼとぼと歩きながら、クリス校長の言葉を思い出していた。

「僕に……魔法の才能なんてあるんだろうか……」

 カノンはため息をついた。


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