7話 尾行よ、尾行

数分後。


「あっ、駅前に着いたわ。烏丸君を見失わないように」


 実は、今、おれ達は烏丸を尾行しているのだ。


 さっきまで、烏丸トークをしていた所は、バスの中である。


 もちろん、烏丸に気付かれないように小声で話していた。


 制服だと気付かれるので、私服に着替えてきた。


 顔を見られないように、帽子を被り、サングラスをはめている。


 白鳥はマスクまで付けている。


 季節は夏。


 明らかに、不審者である。


「おれ達、ストーカーみたいだな」


 もちろん、小声で話しかける。


「ストーカーではなく、尾行よ、尾行」


 烏丸は事件の容疑者ではない。


 どちらかといえば、被害者だ。




 おれ達は駅前のカフェに移動した。


 烏丸は誰かを待っているようだ。


「何で、烏丸君は駅前に来るのに、わざわざバスを使ったのかしら」


 おれ達の通う桜木高校で、バス通学をしている者はほとんどいない。


 だいたい自転車か電車通学だ。


「同じ駅前に来るなら、電車の方が速いのにな」


 烏丸は窓の外を気にしながら、コーヒーを飲んでいる。


 何か頼まないのも悪いので、白鳥がイチゴケーキを頼んだ。


「マスクしてたら、食べられないだろ」


「じゃあ、あなたにあげるわ。有り難く頂きなさい」


「普通に、マスク外せばいいだろうが」


「嫌」


「じゃあ俺がケーキ、本当に食うぞ」


「どうぞ」

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