2話 烏丸 凛

「今回も大丈夫そうね」


 恋愛相談を終え、白鳥は自信有り気に言う。


「お前の恋のお守りって、案外効果あるのかもな」


 相談者には、もれなく恋のお守りが貰えるのだ。


「お守りは、ただのアイテムに過ぎないわ。自信を付けるためだけのね。とにかく、お守りがあるから大丈夫って思えば、自信は湧いて来るでしょう。勇気を出して告白してみたら、意外と行けるものなのでしょうね。……それでも、最後は自分に頼るしかないけれどね」


 心理学的なことらしい。


 ちなみに、そのお守りはメイド・イン・おれ。


 四人兄弟の長男をナメるなよ。


 料理に裁縫、家庭科は得意科目だぜ。




「あっ、烏丸だ」


 校舎を出て、帰ろうとした時、体育館の横でクラスメイトの姿を見付けた。


 遠目からだけど、何となく彼だと判った。


「烏丸 凛」


 おれ達のクラスの委員長であり、生徒会の書記もこなす。


「あら、彼、また告白されているのかしら」


 烏丸に告白しているのは、ポニーテールの女子だった。


 何か、必死そうだ。告白だから、当たり前だろうけど。


 対する烏丸は、困惑してるみたいだ。


 どうやら、告白は失敗したようだった。


 ポニーテールの女子は部活に戻り、烏丸もその場を去った。


「……おれ達、見て良かったのかな」


 いや、良くはないだろうけど。


 普通に気まずいよな。


「……見てしまったものは仕方ないでしょう」


 そうだよな。おれ達の心の中に、そっと仕舞っておこう……。


 その時の白鳥の顔が、妙に難しい顔をしていたのが少し引っ掛かったけど……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る