TABRIS

横谷昌資

I’m Here

“ここは彼らに寛容だ

だってあそこみたいな攻撃がここにはない”

だから、攻撃がないわけじゃない

ただ形が異なるだけ


そばにいない“彼ら”には寛容かもしれない

無関心でいられるうちは寛容かもしれない

“俺”があなたの目の前に現れたとき、

あなたは寛容と無関心の違いを知る


寛容だ、と言ってしまえば

自分の“優しさ”に満足できる

それ以上何もしなくて済む

そして何がどう寛容なのかもよくわからず

“だから満足しろ”と責め立てられる


日常会話の中に潜む不寛容

こんなんじゃ打ち明けられない

もしも俺が“そう”だとわかれば

この会話の内容はきっと変わることだろう


寛容な割には打ち明ける人数が少ない

空気がそれを認めないから

そしたら人のせいにするなとあなたは言う

だからボロボロになりながら進む必要がある

寛容な割にはボロボロだ


何をもって寛容というのか、

どうか俺に教えてくれ

石を投げられないだけマシ

殺されないだけマシ

まるで攻撃されるのが前提のよう

どうか寛容の意味を教えてくれ


“世界には食べたくても食べられない人がいる”

それと何が違う


あなたには大したことではないのだろう

俺には世界が真っ暗闇に見えてしまうのに

そしたらそれは”被害妄想“だと一刀両断

そしてますます死にたくなる


俺はここにいる

でもそれがどうしても言えない

“もしも”の拒絶が怖いから

だからリアリティが生まれない

可能性の話を考えるほどの想像力が生まれない


差別的な社会ほど、抑圧している側が、

自分が人を抑圧しているということ自体をわかっていない

だから“ここには差別などない”と言い切れてしまう


差別がないならなぜ誰も打ち明けないの

結局見えてないから関心がないってだけだ

僕らが何を怖れて“それ”をひた隠しにしているかって

はっきりと差別があるから表に出ていけないんだ


あなたの隣に“俺”がいる、そのとき

あなたがどうするか

話はそれからだ

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