世界唯一の銃使いによる学院無双冒険譚
@SX48430
その武器の名はリボルバー
人間の三大欲求といえば、睡眠欲、食欲、性欲と言われているわけだが、もう一つの欲求があると俺は考えている。
それは”楽をしたい”という欲求。
俺はその欲求が人一倍強かった。
一流の冒険者を目指して生きていく。
それがこの世界においての一般的な生き方とされている。
体を鍛え、剣技を磨き、魔法を極めたり。モンスターと戦うために、人々は日々懸命に努力と研鑽を積み続けなければならい。
――そういうのを面倒に思い始めたのは10歳のとき。
もっとこう楽にモンスターを狩ることができないのだろうかと。なんかレバー1つ握るだけで魔法や剣術を超えるような攻撃ができないのだろうかと。
そこで俺はとある武器の開発を計画し、そして試行錯誤の結果作成することに成功した。
レバーのついたL字の鉄筒型の武器。
筒内に弾を込め、内部で小さな爆発魔法を起こし、その勢いで弾を飛ばす。回転式シリンダーを備え、6発分の弾を装填できる。レバーを握るだけで自動発射できるように設計した。
この武器の名を《リボルバー》と呼んでいる。
「よし、これくらいでいいだろう」
王都行きの馬車の中。布巾でリボルバーを入念に拭く。大事な武器だからこまめな手入れは必要だ。
「お客さん、ついたよ。5000イェンね」
「どうも」
銃をしまい、代金を払って馬車を出る。
大理石でできた整備された町並み。街路に立ち並ぶのはレンガ調の建物の数々。ここが大陸西部を統治する王国、ウェルセリア王国の王都である。
外れの地方や村なんかより、王都の方が冒険者報酬の
「ここが新しい住まいか。ここから俺の新しい冒険者生活が始まるわけだな」
少し歩くと見えてきたのは小さなパート。王都の中でも外れの方にあり、家賃が安かったのでここを選んだ。ちなみに内見はしていない。
今はこんなワンルームの小さな部屋だけど、高報酬のクエストをガンガン回して金を稼ぎ、いつか大きな屋敷に済んでみせる。そんな希望をいだきながらいざ自室へ。
確か部屋番号は302号室だったかな。ドアを解錠して中に入る。
「あれ? 電気がついてるぞ?」
大家さんが電気を消し忘れていたのかな。
「ふわああー。一人暮らしっていうのも開放感があって悪くないわ。父様や母様、家臣たちの目もほとんどなくなったし、本当に気楽で……だ、誰!?」
誰?というのはこっちが聞きたい。
艶があって真っすぐストレートに伸びた黒髪。透き通るような白い肌。赤と水色のオッドアイ。
見紛うことない美貌に反して、服を着ないままベッドの上で寝転ぶ少女。
ふつうに考えて信じられない光景が目の前に飛び込んできた。
◆
アパートの外に連れ出され、ドレス姿に着替え直した彼女とバトルをすることになってしまった。
「私の名はフレン・ウェルセリアよ」
「俺はジュール・ガンブレットだ」
わざわざ自己紹介する必要もないと思ったが、相手がしてきたのでそれに合わせておく。
「あら、驚かないの?」
今のどこに驚く要素が?
「やれやれこれだから学のない凡人は。ウェルセリアよウェルセリア。これでも私、王国の王女という身分なのだけど?」
マジか!? ということはいきなりお姫様と対面してしまったということか。
そして、なぜ王女様がこんなアパートに?と聞きたいところだが、とても答えてくれそうな雰囲気ではないので胸の内に留めておこう。
「私のプライベートを覗いた罪は重いわ。覚悟しなさい!」
「はあ!? 覗くも何もあそこ俺の部屋なんだけど!」
「そんなの関係ないわ!」
お互いに状況を確認した結果、向こうが勝手に部屋を間違えて生活してただけだった。彼女の本当の部屋は隣の303号室。これが真実。それなのにこんなの理不尽だろ。
「どうして俺が悪いことになる? それに部屋に荷物や家具まで勝手に置きやがってー」
「う、うるさい! ドア空いてたんだから間違えるでしょ! とにかくどちらの言い分が正しいか、決着をつけましょう!」
「やってやるよ!」
ムカついた。この勝負は負けられない。絶対に勝って無罪を証明してみせる。
「いくわよ。
言いながらフレンは腰にかけていた二本の剣を両手に装備する。右手には紅い炎の剣。左手には蒼い氷の剣。
なるほどこれがインフェルノブレイダーと呼ばれる所以か。確かに厄介そうだ。
だが、その技を見せてもらう前に試合は終了する。俺はレバーを握り、銃口を彼女の方に向ける。
「な、なに? その武器?」
俺の武器を見てフレンは戸惑いを見せる。
「リボルバーと呼んでいる。5年前に開発した」
もちろん実弾ではなく柔らかいゴム弾にしている。普通に攻撃すると致命傷になりかねないからな。このゴム弾でも動けなくなるくらいのダメージは十分に与えられる。
「終わりだ」
ドンッ
「え……嘘?」
銃撃を右足に命中させる。右足が崩れ落ちたこと彼女は唖然としている。しかし、攻撃の手は緩めない。さらにもう一発。
ドンッ
「うぐっ……!」
続いて左足。これで彼女は立てなくなった。
「勝負あったな。俺の勝ちだ」
これで俺の無罪ってことでいいよな。
「そんな……氷炎の魔剣士であるこの私がこんなにも簡単に敗れるなんて」
フレンは呆然と座り尽くしている。
「なんという攻撃なの。攻撃までの時間が速すぎるし、それにこの威力……こんなの初めてよ」
どうやら自分の身に起きたことに理解が追いついていない様子。
「とりあえず傷を治そう。この近くに病院は……」
「その必要はございません!」
突如、物陰からメイド服のお姉さんが忍者のようにシュバッと現れた。そして回復魔法を使用し、手際よくフレンの傷を手当する。
「私はフレン王女様専属使用人のシズノと申します。ジュール様、とおっしゃられていましたね。今しがたの試合は実に見事でした。フレン王女様は王国内でもトップレベルの魔剣士です。それをいとも簡単にやっつけてしまうなんて。精巧に吟味した結果、このことは国王様に報告すべきであると判断しました。私達とともに王宮まで来てもらえますね?」
王都到着から経過した時間はわずか30分。いきなり王宮に招待されることになりました。
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