何があっても

バニラアイスクリーム

何があっても

 なにか違和感を感じ目が覚めると美涼が、僕に抱きついて震えていた。多分また忘れたい記憶を思い出し震えているんだろう。彼女が僕たちの元から急に消息が消えたのが3年前。そして僕たちの元に戻ってきてから早くも1年がたった。


 彼女が2年間の間どんな大変な体験をしてきたのかは分からない。警察が彼女を発見した時の表情は、酷く暗いものだったらしい。まだ彼女を誘拐した奴らは捕まっていない。現状わかっているのは組織的な犯行ということだけ。そのため僕たちが住んでいる家の周りには常に警察官が巡回し、外出する時も私服警官が遠くから護衛についている。


「美涼、大丈夫?」


 彼女に声をかけながら頭を撫でる。彼女が震えている時は、毎回抱きしめて撫でてあげると落ち着くみたい。しばらく撫でていると今回も落ち着いてきたみたいだ。


「優也くんありがとう。ごめんね」


 彼女からごめんねと言われると胸が痛くなる。彼女がごめんねと言う必要は無い。言うなら僕の方だ。彼女のことを守れなかった僕の方だ。


「どういたしまして。でもごめんは余計だろ?」


「うん、そうだったね。ありがとう」


 彼女のてへぺろみたいな表情が愛おしすぎてついニコニコとしてしまう。


「ねぇー?」


「どうしたの?」


「私が寝るまでなでなでしてくれないかな?」


「なでなでだけで良いの?」


「ん、じゃあトントンもして欲しいな……//♡」


 彼女になでなでだけで良いのか問うと可愛い回答がやってきた。


「うん! いいよ分かった」


 しばらくなでなでトントンをしていると彼女は眠りにつき始めた。


「優也、これからもずっと一緒だよ」


「うん! 今度は何があっても絶対に美涼は離さないよ」


さて眠りに落ち始めていた彼女に声は届いたのかな?

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