第3話 顔合わせ

翌日。

「ここが直系級チャイルドクラス?」

「みたいだな。アイツもいるし」

「遅いですわよヴォル、スピナちゃん」

「………あのちゃんづけ何とかならないの?」

「諦めろ、アイツはお前みたいな小さいのに目がないんだ」

そう、とスピナはため息を吐く。流石にこればかりは同情せざるを得ない。

現にセピアはスピナを抱き上げようと駆け寄ってきていた。あっさりと躱されて不発に終わったが。

「それより、先輩たちは?」

「中にいらっしゃいますわ。……学園始まって以来のイレギュラーですもの、お二人とも相当気になってるようで…私、さっきまで質問攻めにあってましたのよ?」

貴方が悪いんですのよ、と言いたげな視線を向けられても困る。ちゃんと時間には余裕をもっているのだ、こっちも。

「…大体、何でそんなに早いんだそっちは」

「それは………そのぅ」

セピアが間が悪そうに目を逸らす。が

「……多分アンタ、昨日の夜寝れてないんじゃないの?フェンリルを質問攻めにしたりとかして」

ツイーとさらに視線が明後日の方角に逸らされ、ヴォルとスピナは顔を見合わせてため息を吐く。

「…とりあえず入りましょ。待たせてるんでしょ」

「えぇ、そうですわね」

咳払い一つしたセピアが扉を開け、3人は教室へと入った。


「ようこそ、君が規格外エクストラの召喚士か!はじめまして!」

温和そうな青年が両手を広げて出迎える。

「……はい、ヴォルガーテと申します。お噂はかねがね」

「いやいや、堅苦しいことはここではなしだよ。よろしく頼む、ヴォル君」

「……アンタが畏まるって、この人相当偉いとこの出なの?」

「スピナ!!!!」

いい加減この態度はどうにかしてくれないか。

「はっはっは、いや気にしないでくれヴォル。召喚獣なのだから、この態度は当然だろう」

「……はっ、どうだか」

真っ向から異を唱える声がして、全員の視線が向く。

「召喚士の才能がないから、細工でもしてどこぞから孤児でも拾ってきてこじつけでもしたんじゃないのか?」

「慎んでください兄上、『召喚の儀』による契約は正式に結ばれていると、陛下もお認めになったのですよ」

「あれ、アンタの兄貴なの?」

「えぇ、はい。優秀なのは良いのですが、この通り気位が高いのが玉に瑕でして…」

「あの調子だと苦労したんじゃない?敵多そうだし」

唱えられた異に意を介さず、そんな風に話すセピアとスピナ。

「………貴様ら………!」

わなわなとセピアの兄が拳を握って震える。相当お怒りのようだ。

「……全く。落ち着きたまえ、我が友」

「これが落ち着いていられますか殿下、我ら直系級チャイルドクラスにあのような異物を………!」

「父上も認められたのだぞ。そなたは陛下の命に背く気か?」

「ふん!あくまで仮の処分でしょう」

睨む視線がヴォルに向く。

「な、なんですか」

「貴様の召喚獣と私の召喚獣を戦わせろ!それで資質を見てやろう!」

「…………はぁぁぁぁぁ!?」

ヴォルは素っ頓狂な叫び声を上げるほかなかった。

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