BL

ね、狸寝入りさん。

140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)


志魔 × 晴明




 ドアノブに手を掛けたまま、横になっている晴明の姿をまじまじと見つめて感嘆と息をついた。休憩に入り、いの一番に聞く晴明の声も気持ちが和らぐが、これはこれで感慨深いものがある。

 出来るだけ音を立てないよう、後ろ手にそっとドアを閉める。瞼が閉じられたままなのを確認してから、脱いだベストを椅子の背もたれに引っ掛けた。シャツのボタンをいくらか外して楽な格好になると、足音を立てないよう慎重にベッドまで近寄り、その姿を今一度じっくりと目に焼き付けた。

 自然と表情が和らいでいくのを感じながら、ゆっくりとベッドに乗り上げる。揺れ動いたことで流れた髪をそっと払うと、そのまま頭の隣に手をついた。

 一瞬だが、唇が僅かに引き結ばれるのを見て声を殺して笑う。確信は無かったが、今のでしっかりと分かってしまった。

 どうしようもなく愛おしくて、愛おしくて。このまま起こしてしまうのも惜しいと、ちょっとした悪戯をし返してやることにした。そのまま手を触れることも無く隣に寝転がると、頬杖をついて彼が音を上げるのを黙って待つことにした。

 唇、鼻筋、耳の形。普段はなかなか見れない所までじっくりと観察していると、ついにしびれを切らしたらしく、睫毛が微かに震えたのに気が付いた。

 じっとそこに視線を送っていると、瞼が恐る恐る開かれていく。被さる睫毛の奥で様子を探るように眼球が動くのを見ていながら、よく笑うのを我慢できたものだと自分を褒めてやりたいくらいだった。


「狐の狸寝入り、か」


 今にも笑ってしまいそうな声で言うと、ハッとした顔でこちらを見る。みるみる内に赤くなっていく顔を隠そうとして掛布団を引き上げようとするが、それが出来ずに狼狽えている姿が実に愛らしい。


「っ君、は……もしかして、ずっと見ていたのか?」

「見てくれと言われているような気がしたものでな」


 声にならない抗議の声をあげながら、掛布団越しに蹴ったり叩いたりしてくる。その体に覆いかぶさると、そのまま抱き込んでしまってからひとしきり笑った。


 

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