旦那様の仰せのままに (仮)

ミハ

第1話 最凶夫婦は出会う

1人の女性が花街をゆっくりと歩く

その片手には黒と赤の鞘が目立つ剣を持ってる。服装は侠客の黒と赤の服装。佇まいから猛者を感じさせる

今日は霧雨で地面が濡れている

その地面に花街の灯篭の光を反射し美しい情景を作っていた


ここは礼帝国の首都 斉都(せいと)の南に位置する商業区の中にある花街

記憶を失い、この世の中に戸惑いつつも見つけた仕事を失ったその女は路頭に迷っていた。


女はとある妓楼で酒に悪酔いした客や悪行を働く者を排除するために雇われた用心棒だった


だが、どうにも女の鶴のような美貌のせいで逆に諍いが多発してしまった

この状況をどうにかするためにやむなく店主は女を解雇する事にした

その結果、彼女はこの現状に陥っている



職を失い、家賃を払えなくなった彼女はつい先程、追い出されてしまった。大した持ち物も持ってなかった彼女は着の身そのまま出てきたのだ


彼女は小さくため息をついたあと、呟く

「……どうやら私はついてないみたいです」


するとガタンと猫が高いところから落ちたような音が鳴った

でも猫がこのようなところに来るのは珍しい。特に野良猫は人を怖がる。いたとしたらそれはネズミだろう。でもネズミはあそこまで大きな音はならない。

怪しんだ彼女は音の源である小さな通路に目を向けた

人がいる。影の大きさから察して男1人を囲うように5人の男が佇んでいる

この感じから察して、タカりだと見分けがつく


どう見ても相手は一般人または官吏ですね。助けた方が良さそうです。官吏だったらもしかしたら雇ってくれるかも…

…そんな簡単なわけないですね


彼女はまたため息をし、足を小さな通路に向け、大きく右足を踏み出した。

彼女は高く結んだ髪の毛を揺らす。前屈みの体勢で突風のごとく走る。あと、数十メートルでたどり着くところで鞘ごと件を構える。



彼女に対して後ろを向いている男にまず1発食らわせたあと、右足を勢いよく踏み込み左側の壁を左足で体を右斜めに進み、背面の男に攻撃を食らわせた

その後、来る胸あたりに来る横斬りの攻撃を予測した彼女は姿勢を低くし、右足で1人の足を引っ掛けた

攻撃してきた男は盛大に転ばした

その間に足元に攻撃してきた男の攻撃をジャンプすることで避ける。

その後、彼女はその男に正面から1発食らわした

左側に避け、攻撃をくらわした。

その間に先程後ろで転んんだ男が起き上がってきたので溝落に膝蹴りを食らわせた



無事、全ての賊を倒した彼女は囲まれていた男の方へゆっくりと近づく


囲まれていた男が彼女の強さから恐れ見いだして逃げ出すだろうと予測していた彼女は彼が逃げずに彼女がたどり着くのを待っていることに少し驚いた



その男は彼女の頭1つ分大きかった。顔は暗がりでよく見えないが色白で体格的に細いということだけは分かる

また、服も良くは見えないが漆黒の漢服を来ていて香の匂いがしたため高貴な生まれなのだろうと予測が着いた

また、彼からは独特な威圧感のある雰囲気と眼圧を感じた

彼女は恐る恐る彼に声をかけた

「お怪我はありませんか?」

「えぇ」

声から察して若い年齢だと分かった

かなり聞こえやすく朗々とした美しい低い声だった


「それは良かった。こういう道は危ない輩が多いのでお気を付けください」

「………ええ」

少し間の空いた返事。この暗がりのせいで表情がよく分からない。なんとなく嫌がられてる感じがした

長々と居座ると変に誤解を産みそうだと感じた彼女は立ち去ることを選んだ

「では…」

続きの台詞を断ち切るかのように言葉を呟かれた

「ひとついいですか?」

「はい…??」


「貴女は武官ですか?」

この質問はこの現状にあっていると感じた彼女は難なく答えた

「いえ。つい最近までは用心棒をしてました。雇い主の諸事情でクビにされてしまいました」

「それはご愁傷さまです」

重い雰囲気になったことを察知した彼女は早々に断ち切りたいがために言葉を紡いだ。彼女は暗い話ほど苦手なのだ。常に楽観的にありたい。そうすれば明日が見えてくるというものだとそう思っている


「とは言っても数ヶ月前に記憶を失ってしまって。前の自分が何をしていたのかは知らないのですが……。ただこの剣を持っていたので武人であることは間違いありません」

すると彼女は剣を彼に見せつけるかのように頭の高さまで刀を上げ見せたあと、元の定位置に戻し

「そうですか」

「はい。なので今は職はありません」

次に告げられる言葉が『自分の用心棒にならないか』という台詞に彼女は期待したがどうも来ない

彼女は彼の方を見つめる

「貴女に夫や恋人は居ますか?」

彼女は驚きしばらく彼を見つめる。とはいえ暗がりでよく見えないため、表情が分からない。怪しく感じた彼女は1歩ほど後ろに下がった


……え?なんでその質問が来るのでしょうか?

もしかして特殊な仕事なのでしょうか?

でも不思議すぎます。怪しいですね


彼女は恐る恐る答えた。答えなければ何が起きるのか分からない

「…はい?その…。居ませんけど…?」

「ならば私と結婚しませんか?」

「はい???!!!」

今、とんでもない話を聞いた気がします!もしかしたらわたしの耳がおかしいのでしょうか?


彼はため息をついあと、もう一度、彼女に告げた

「だから私と結婚しませんか?」

再度言われてやっと理解出来た。どうやら彼女の聞いた内容に齟齬は生じていなかったみたいだ。とはいえかなりぶっ飛んで話が進んでる。


やはりあっていました!

もちろん私は女性なので出来なくはないのですが、唐突すぎます。ひとつやふたつどころか3つほどまで話を飛ばしてる気がします!!

とはいえ聞かなければ分かりませんね


「その……。何がどうなってそうなるのか分からないのですが…?」

「すみません。先走りすぎました」

「…なるほど?」

彼女は頭を傾げてた


先走りすぎにも程があると思いますが…?

かなり強引なかなのでしょうか?でも悪い人ではなさそうですね


長々とした話になると察した彼は彼女に声をかけた

「それよりもここで話すのは場所的にまずいのでどこかに移動しましょう」

彼女は足元を見たあと、苦笑した


こんなところで話をしてたらまた襲われてしまいますね。

それに通行人が来たらかなり誤解の生むような状況です


「確かにそうですね」







2人は大通りに出て、そこそこ賑わっている笑酒楼(しょうしゆろう)という店の奥の個室に腰を下ろした。適当に店員に酒と燻製卵とイカのつまみを頼んだ。そこまで賑わっていないだけあり、早々に品物が届いた


明るいところに出るとその美貌がよくわかる

明らかに武道をした事のない色白の肌の上に黒と暗紫の漢服を来てい。どことなく深い甘みのある伽羅の匂いがする白狐のような美しい男だった


独特な雰囲気のある美しい方ですね。まるで天界の人みたいです。

年齢は20代後半くらいでしょうか?

それに眼力が凄いです。まるで心まで見られてるみたいです


「私の名前はトウ 伶傑レイケツと申します。仕事は礼帝国の宰相をしています」

「えぇ?!!さっ!?さい………」

彼女はまずいと感じ、口元を咄嗟に手で覆った。間違いなく周囲に聞かせてはならない話だ

伶傑は彼女の様子を見て苦笑する

「つい最近、刺客によく狙われているせいで睡眠が阻害されています。さらには家族から結婚しろとうるさくて困っている状況です」


彼女は頭を傾げた

だとしたら名家の令嬢と結婚して、高いお金を払って腕のいい用心棒を雇えばいいはずです。その財力を燈さんは持っていらっしゃいます。なのになぜ、私に求婚したのでしょうか?


「はい。でも令嬢を娶って、優秀な用心棒を雇えば済む話ではありませんか?」


すると彼は重なっている2つの杯から自分の杯だけを取り出した。そしてその杯に酒を注いだ後、口をつけた

その動作には気品が漂っている。


うわぁ。凄いです。

こんなに気品のある動作ができるのですね。

明らかにこの酒楼は場違いにも程があります。

それになんとなく憂いも混ざって、お酒の場でもあるせいか色気があります……。うー。直視が辛いです


彼女は気まずさから視線をお酒に向け、自分の杯にお酒を注いだ。そのお酒を呑んだ


「確かにそう考えます。ですが、私は人間不信です。婚姻はまだしも、用心棒がどうしても信じられません」

彼女は伶傑を直視した。彼の顔は少し辛そうに歪んでいた


どうしても足の引っ張り合いの多い官職という仕事は人間不信に陥ってしまうんですね……。燈さんは宰相ですから尚更、謀略と内政で心を折られているはずです


「彼らはお金で雇われています。もし自分の出している給金よりもより高い金額を提示すれば私を裏切る者も少なくありません。私としては絶対的な安全が欲しい。裏切られては困ります」


一時の大金を得たところで、数年どころか何十年も雇ってくれる主を裏切るひとは少ないはずだ。それこそ恨みを買うような人や頭が悪いなら別の話

だが、伶傑はこの国の宰相。彼が抜ければ現行の仕事も止まってしまい、さらには周りの高官にかなりの負担をかけることになる。そうなると多大な礼帝国の不足に通じてしまうのだ。だからこそ派閥や敵国から狙われる状況に陥っている。


彼女はそこまで考えた後、伶傑をじっとみた

燈さんは武術を嗜んでいらっしゃる方ではありません。歩き方や動作、手だこがない時点で分かります

それに武人ならあの状況をどうにかできたはずですしね。

とはいえ、女性のようなか弱さはないみたいなのでそれなりに体は鍛えているみたいです。やはり身体が資本なのは文官も変わらないのでしょう


「確かに懸念点ではありますね」

「そこで強い女性武人と結婚するという考えです。私の家は代々高官を出てきた名家です。その名と贅沢な生活をを捨てるよりも高い手切れ金を断る方がよいと考えるはずです」

「確かにその方が断然いいですね」

「はい。だから武術の猛者もさである貴女に求婚しているのです」

「なるほど」

彼女はイカの干物をひとつ取った

その干物を割き、口に運ぶ


これなら納得です。妻であればたとえ寝所でも安全です。それに常によく居るのは当たり前のこと。となればより強い守りになりますね

ですが、私は記憶を無くした名無しの武人。

もしかしたら危ない人の可能性があります。それに姓が妻姓である時点で汚名だと騒がれます。

何よりも現在、私は平民同然。こんなの不釣り合いにも程があります。

それなのになぜ、燈さんは私にしたのでしょうか?


「ですが、私は以前の名前を覚えていません。つまり名無しです。名無しの私では汚名を着ることになるのでは?それに家族の方が受け入れられないのではないでしょうか?」

「実の所、お見合いしても断れてばかりの私を見て両親はは『誰でもいいから結婚してくれ』と騒いでいます。その点、貴女の記憶を取り戻せば良いだけの話ですし、貴女の剣技には武官と似たような所が多いです」


剣術を習っていない伶傑が意外に武術の審美眼があることに彼女は驚いた。それと同時に自分の武術がどのようなものなのか分からなかった彼女は多くの武官を見てきたであろう、伶傑の意見を聞いて納得した


そういえば職に就いて間もない頃、1度だけこう言われたことがありました。確か……


「……以前働いてた妓楼で、『荒れくれ者の剣ではない。基礎と鍛錬の末に得た戦い方だ』と同じ古参の用心棒にに言われた事があります」

「その方の意見も合わせて言うなら、武官や武道家の生まれの可能性が高いですね。動作を見てもガサツな動作が少ない上にどちらかと言うと男っぽいです」

「なるほど。もしそうなら今の私では本当の名を見つける術がありません。貴女の妻となって沢山の武官や武人に会う必要性があります」

「ええ」

彼女はこの婚姻に深い意味と互いの大きな利益を感じ、この婚姻を受けることを心に決めた。


名前が分かればもしかしたら色々してくださる燈さんにお礼が出来ますし。以前、何をしていて、なぜ記憶を失ったのか知る必要があると思うのです。それに家族が居るなら心配しているはずです



「ではこれからもよろしくお願いします」

すると伶傑は頷いた後、立ち上がり彼女の目の前に右手を差し出した

「はい。こちらこそお願い致します」

彼女もまた立ち上がり右手を出し、伶傑の手と結んだ

しばらくして2人は手を離し、元の場所に座った




「そういえば……、貴女は用心棒の頃に言われてたあだ名はありましたか?」

「いえ。実はなくて、『名無し』と呼ばれてました」


彼は顔をゆがめ、私に同情の視線を数秒向けたあと、お酒を1口呑んだ

「……では、私が名付けてもよろしいですか?偽名がないと呼びずらいので」

「はい。確かに、そうですよね…」


すると伶傑は腕を組みしばらく考えたあと、周りを見回した。

伶傑はお店に活けられている、凛とした美しい白色の胡蝶蘭に目を向ける


「……胡蝶蘭。蘭……。『白蘭ハクラン』はどうでしょうか?」

「白蘭…。いい名前ですね。気に入りました」

「では貴女を白蘭と呼びますね」

「はい」


白蘭は酒が無くなった伶傑と自分の杯にお酒を注ぐ

それを伶傑は見つめる

眼力が強いが故に白蘭は気まずそうにならながら注ぐ

「その……。燈さん」

「はい」

「先程からずっと敬語でしたが、燈さんの妻になるのですからタメ口で大丈夫ですし、なんなら名前も呼び捨てしてください」

実の所、白蘭はずっとこの事が気になっていたのだ。明らかに身分差がすぎるのに敬語はどうしても変に萎縮してしまう

「ではその言葉に甘える」

「はい」

「白蘭も私のことを伶傑と呼ぶといい」

「いえ。私は伶傑さんとお呼び致しますね。夫を重んじることは大切なので」

その意見を聞いた伶傑は眉間にシワを寄せた

どうやら気に食わない様子だ

それを察した白蘭は苦笑いする


実は燈さんを呼び捨てにするのは少し精神的に辛いんです。何せ、この国の宰相様ですし、家格もかなり離れています。それなのに呼び捨ては外聞に良くない気がします


「夫婦なのに呼び捨てではないのは少し距離感を他人に感じさせるのではないのか?」

「確かにそうですけど、私には宰相である燈さんを呼び捨てにはできません!」

しばらく伶傑と白蘭は見つめ合い、眼で語り合う


伶傑さんはとても眼力があって強くて怖いです。ですがこれだけは通したいのです!私には呼び捨ては難しすぎます!


数分ほどして白蘭が譲る気がないのを察した伶傑はため息をつく

「はぁ……。分かった」

「はい。ありがとうございます」

そして白蘭は伶傑に微笑んだ

伶傑は少し不貞腐れた顔をして白蘭を見つめる



「そういえば、白蘭は家を追い出されたのであったな」

「はい」

「なら屋敷に来るか?」

「え?」

「燈家に雇われれる形で短い間、住み込みで働くことにすればいい。それで別荘にいる両親を呼び、挨拶をしてから結婚すれば何ら問題は無い」

「確かにそうですね。その条件でしたらお言葉に甘えます」

「ならば屋敷に向かうか」

「はい」


2人は立ち上がったあと、お金を払い伶傑の屋敷へと向かった




南の商業区を北西へ向かうとその灯りはだんだんと失せていく

霧雨は止んだらしく、外はじめりとした空気に覆われている。通り通りに咲く色とりどりの紫陽花には雫で濡らしている。さらには時折現れる満月の明るい明かりがその魅力をさらに引き立たせる


しばらく経つと官吏や高級商人が住まう屋敷街に入った。さらに歩くと大きな名家の屋敷が点在する所に入った

記憶を無くしてから初めて見る白蘭は周りをキョロキョロと見回しながら歩く


わぁ…!!大きな屋敷たくさん建ってます!

伶傑さんの屋敷はどこなのでしょうか?

でも宰相なのですからかなり大きいですよね?

ちょっと萎縮してしまいます


しばらくして他の屋敷と比べて一回り大きな屋敷に伶傑は止まった

そして後ろに続いていた白蘭に声をかけるべく、後ろを振り返った


「ここが我が家だ」


近くにある灯篭のおかげでかろうじて燈府(燈家)と書かれている表札を読み取れた

その後、燈家の門前をじっくりと見る


やはりさすが名家 燈家ですね。屋敷の広さが尋常ではありません。これだけの屋敷の管理をするのに10名以上は雇ってるはずです。それに他の屋敷と比べて派手なものよりも木や色が黒色なので落ち着いていて威厳が感じられます。特に門の威圧はとても強いです。もしかしたら固くて重くて黒い黒檀でも使っているのでしょうか?


すると伶傑は屋敷の中に入った

それに続いて白蘭も屋敷の中に入る

中を見た彼女は周りを見渡した


中も中庭を真ん中にしてコの字型に建てられている。中庭には派手に物を置かず、所々に石や木々がうわっている。屋敷は外と違い、木々の元の色を大事にしているのは変わらない。だが、屋根飾りや窓飾りなどの木彫りがとても繊細かつ美しさを放っている


そこから感じるのは威厳と厳格さを感じる

白蘭は派手な色を見ると目が疲れるのでこのような意匠がとても好きだ


如何にも伶傑さんらしい屋敷ですね…

威厳と落ち着きのある感じがよく合います


主の帰宅に気がついた大柄の男性と侍女は伶傑の前に現れた

「「お帰りなさいませ。旦那様」」

来佑ライウ。何かなかったか?」

「はい。不審な者は見かけませんでした。それと……」

来佑は隣の侍女を見る

麗薔リシュク様から文が来ました」

「……そうか。雪月セツゲツ。後で文を持ってきてくれ」

「かしこまりました」

そう言って彼女はお辞儀したあと、下がって行った


来佑は伶傑の隣にいる白蘭を見る

「それよりもその方は一体どなたですか?」

「刺客に狙われた時に助けてくれた白蘭だ」

「あー…。なるほど。ついにそこまで来ましたか…」

来佑は呆れた顔をして伶傑を見る

どうやら彼は白蘭が嫁候補だと直ぐにわかったみたいだった

「……」

伶傑は視線を横目に流して、追求を逃れたいみたいだ。


確かに突然は迷惑にしても大概すぎる話ですよね…

やはり日にちを跨ぐ方が良かったかも知れません


「随分と綺麗な方を見つけましたね。腕の立つ人を見つけて来ても顔がダメだったり、頭が悪いからダメだったりと謎にいちゃもんつける旦那様がまさか怪しい人を連れてくるとは思いませんでした」


その話を聞く限りだと伶傑はかなりめんどくさい人なのだと白蘭は分かった。

来佑の感じからして白蘭は2人がよく口論しているのだと分かり苦笑した


どうやら伶傑さんは来佑さんにかなり迷惑をかけていたみたいです。でも頑固なのは多分お仕事も関係しているかもしれません。自分の意見を通さないと上手くいかないことも多いと思いますから

だとすると、もしかして名前呼びを突き通したのはかなり珍しいのかも知れません!


頑固の人はかなり大変だと言うので来佑さんはかなり……

「苦労されたのですね…」

「ええ。それはもう。本当に頑固でしてね…。なので色々と大変でした」

どうやら白蘭が来佑に助太刀したせいだろうか、伶傑は少し怒っている

白蘭は自分のせいで口論が始まったのだと知り、また苦笑いした

「ふん!妥当な選択だ。母上は顔や礼節がある程度、なければダメだ。父上は頭の良くて裁量の良い人でないと認めない主義だ。認めて貰うためにも仕方がないだろう?」

来佑は呆れ顔で伶傑を見る

「ですが、そう簡単には見つけられないものです。多少は条件を負けるべきです」

「だが、諦めないおかげでかなりの好条件を見つけてきた」

そう言って伶傑は白蘭を見つめる

来佑は白蘭に怪しい目を向ける

「それはなんとも……」

「つまりということだ」

そう言って伶傑は来佑に向かって自慢げに見た

来佑は盛大なため息をついた

「少しはその性格を治した方がよろしいかと思うのですが……」

「ふん…。生憎、これでここまで来たのだ。変えるつもりはない」


来佑は腕組みをして2人を見る

「はぁ……。それで白蘭さんはどうされるのですか?」

「しばらくの間は用心棒として雇うつもりだ」

「そうですか……。めかけではダメなのですか?」

「一応、私は元々用心棒で働いていたので…」

来佑はさらに怪訝な目で白蘭をじっと見つめる

その目を見た白蘭は苦笑いをした


分かる気がします。記憶がない上に何故か稼ぎのい妓女にならずに生きているなんて不思議なことこの上ないはずです。疑われてもしょうがありません。

ですが、このまま怪しい人というままでは生活に歪みを産みます。なるべくはより良き妻用心棒として思われたいです!


「……そんなに美人なのに?妓女になった方が稼ぎはいいでしょう?」

「確かにそうなのですが…。私は多分、元々剣で生計を立てて来たのだと思うんです」

曖昧な言葉に来佑は眉間にシワを寄せた

「…多分?」

「実は半年前からの記憶が一切ないんです。剣を持っていたのでおそらく武人なのは間違いありません」

「随分と不思議な身の上ですね」

「はい。私は自分が何者で、どうしてこうなったのかを知りたいのです。ただ今の私では調べるにしても人脈がないし、つてがありません。このままだとずっと分からずじまいです」

「なるほど。だから旦那様は白蘭さんに声をかけたのですね」

「ええ…。驚きましたが、私にとって、とてもありがたい提案です」

なぜ伶傑の妻になることを選んだのか来佑は理解した。だが、まだ不満はあるみたいな様子に白蘭はあれをするべきか悩む

「ですが、白蘭さんが自分を知った時折、白蘭さんはどうなさるのですか?もし結婚してたら……」

間髪入れずに伶傑が言う

「おそらく結婚していないだろうな」

「なぜ分かるのですか?旦那様」

猛者もさだからだ」

「…だから?」

「私と同じだ。結婚や恋をする時間さえなく仕事したから強いと言うわけだ。実際、10を数える頃には敵は全て倒れてた」

伶傑の正論と言えるその意見に来佑の疑問が少し解けたようだった。


どうやら伶傑さんが助け舟を出してくれたみたいです。より信ぴょう性を出すために、あれを見せるべきですね。ただ、あれを見せると大体の人は驚いたあと悲しい顔をします。なので嫌なのですがしょうがありませんね


「なるほど……」

「それに私の全身には大量の古傷から生新しい切り傷まで残ってるので事実で間違いありません」

そう言って白蘭は左腕の服をめくって見せた

細いが筋肉のついた腕には大小の古傷から真新しい傷まで様々な傷があった

それを見た2人は驚く

「っ!!?」

「なっ!!!」

「それに最初、目覚めた時も背中に大傷を負っていた状態だったので…。こんな状態の私が嫁ごうとは思わないと思うんです」

2人は少し悲しい顔をしていた


当然です。女性にとって傷は結婚問題に直面します。傷がある人を嫌がる方は多いですから。きっと記憶を失う前の私もこれで結婚を諦めたはずです


「それを見せられたら文句は言えないですね…。戦ったことの無い人間にそんな傷はそうそうできません。疑ってすみませんでした」

「いえ。お見苦しい物をお見せしました。本当はあまり見せたくないんです。悲しまれますし、嫌がる方も多いので」

伶傑は白蘭を見てため息をついた

その顔は白蘭に対して呆れてる顔だった

「それは白蘭が必死に戦場を生きてきた証だろう?聞かれたら堂々と見せればいい。それで暴れん坊な女だと言われたら張っ倒せばいいだろう?」

白蘭は大きく開いて驚いた。何故か伶傑が輝いて見えた


っ!?!!!初めてそんなこと言われました!大体の人は労るか、物騒な人だと言ったり、嫌な目で見ます。

そして大体の人が関わろうとしません。なのに伶傑さんはこのを生き抜いてきた功績だと褒めた。

もしかしたら私自身が1番、自分の傷に対して不感していたのかもしれません。

やはり伶傑さんは凄い人です!


白蘭の瞳がキラキラと輝いている。つまり忠犬の眼差しそのものだった

「…っ!?!!……そんなこと初めて言われました」

当然といった様子で白蘭をじっと見つめる

「めそめそなどお前らしくないだろう?」

「確かに…」

伶傑はため息をついて、呆れ顔で他所方へ視線を向けた。耳は少し赤くなっている

伶傑は小さな声で呟いた

「気にするのがどうにかしている……」

「ですが、張っ倒すのは美徳では無いので、用意周到に仕返します」

「さすが俺が選んだ嫁だけあるな」

「……なんか物騒ですね」

「こういうのはバレずにやるものですよ?」

「ああ。そうだな」

「何かもう怖いです……」


「…確か、部屋はひとつ空いていたな?」

「…よくご存知ですね」

「侍従の管理を知らなくて何があるじだ」

「確かにそうですが、ここまで来ると少し恐ろしいです」

「知ることは大切です。特に弱みは握るからこそ上手く行くのですから」

「うわぁ…」

来佑は苦い顔している

どうやらまた1人、厄介な人が増えたと来佑は思た


「とりあえず、そこに白蘭を住まわせろ」

我儘でこっちのことを考えてくれない主に不満の漏れたため息をした

「はぁ…。分かりました。幸い、掃除したばかりだったのですぐに準備できます」


あ、さすがに迷惑ばかりはかけられません。

手伝わないと…

それに前の人がもしかしたら変な物を持ち込んでいるかもしれません。確認するべきです


「私がします。私の部屋ですし、変な物がないが確認もしたいので…」

来佑は小さな声で呟いた

「いい人なのは事実。でも

そう言って、伶傑に礼をした後、右に向き歩き出した

白蘭もそれに続いて行く

しばらく歩くと布団部屋に着き、白蘭に布団のセットを渡す。それを器用に白蘭は貰い受けた

それを見た来佑は布団部屋を閉め、白蘭の部屋へ向かった


着くと、来佑は豪快に引き戸を開け、窓辺にあった灯篭のロウソクを使って部屋の中の灯台にあるロウソクに火をつけた

ひとつのロウソクの灯火が中を薄暗く照らす

来佑は引き戸の前にいる白蘭の方を見る

「白蘭さん。ここが貴女の部屋です。つい今日、掃除したばかりです」

「来佑さん。忙しい上に急にした私に色々として下さりありがとうございます」

「いえ。まぁ、あの傷と歩き方とかを見たら手練てだれなのだろうとは想像が着きます。さすがに…」

「そうですか」

「実はここの侍従たちの中で私を含めた数名は武術が使えます。ですが、腕のいい刺客には負けてしまいます。その点、手練である貴女にはかなり期待しています」

「ありがとうございます。役に立てるよう頑張りますね」

「では、私はそろそろ主の世話をしないといけないので」

「はい。ありがとうございました」

白蘭は来佑にお辞儀した

来佑は外に出て行った

それを見送った白蘭はゆっくりと扉を閉めたのだった


白蘭はまず、机と机の中、椅子、蝋燭の火を使って寝台の下を見た

その後に、寝台の上、戸棚、水瓶、地面、壁、窓辺、扉の順で全てを徹底して見た

その間、戸棚にあった茶器や窓辺にあった花瓶などの小物まで隅々と見た


その全てを見た限り怪しい物はないですね

ただ、寝台の下底までは見れていないのが気掛かりです。ですが私の手では難しいです。

あと、天井は別の日にしましょう。きっと休まれてる方もいらっしゃいますし、物音はさせない方がいいです。最初っから嫌な隣人は嫌ですから


そこまでしてやっと白蘭は布団を寝台に敷いた

そして水瓶から水をたらいに注ぎ、胸元に入れていた手拭いを濡らした。

その濡れた手拭いで体を軽く清め、寝台に横たわった


白蘭はあっという間に眠り着いたのだった

意識は常に覚醒できる状態で

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