第50話 突撃
ゴブリンにトドメを刺す役目は他の村人達に任せても問題無さそうであった。村を出発する前に発破を掛けた甲斐もあってか皆率先してゴブリンを殺して回っている。
「これで終わり? もっとボクの活躍見せたかったなー」
「いや、巣穴にいるゴブリンがまだ残っている。お前にはもうちょっと力を借りたいから協力してくれな」
「任してガッテンだよっ!」
シルフィーは小さな胸を張り右手でその胸を叩きながらそう答えた。
(おいっ……某局からクレーム来そうな返事をドヤ顔でするんじゃないよ……)
と思いつつ、そんなやり取りをシルフィーとしている所へ村長のエドマンが歩み寄って来た。
「それにしてもクライドさんもお人が悪い。始めから我々に損害が出ないと分かっててあの様な事を仰ったのですね」
苦笑混じりの表情でそう話しかけてくる。
「まぁ、村の人達にも覚悟を持って貰いたかったからね。それに何があるかなんてやってみなきゃ分かりませんし、絶対安全とは言い切れませんから」
「確かに仰っる通りです」
「さて、出てきていたゴブリン共は一通り片付いたみたいだし巣穴の洞窟に向かうか。エドマンさん、気を緩めるのはまだ早いですよ。道案内を頼みます」
辺りを見回すと村人が殺したゴブリンが一箇所に集められていた。この数でもまだ半分にも満たしていないのだ。残りのゴブリン達がいつ異変に気づくか分からない状況のため、早急に狩り尽くしたかった。
「あのー、私はどうすれば良いでしょうか?」
急ぎ洞窟へ向かおうとする俺にミリアが話しかけてくる。
おっとそうだ。彼女をどうすべきか……ミリアの身の安全を考えると俺の近くに居てくれた方が良いのだけれども……
「ミリアよ、お主はわっちの傍におれ。クライドの傍では邪魔になるであろう」
俺の行動を黙って見守ってくれていたエリーナのこの一言はとても有難かった。
邪魔と言う訳では無いが、やはり何があるか分からない以上、より安全な場所にいてくれる方が良かったからだ。エリーナの隣以上に安全な場所も無い。
「師匠、すいませんお願いします。ミリア、エリーナの傍にいてくれるか?」
「分かりました。エリーナ様ご迷惑おかけします」
「なに構わぬ。それよりクライド、急いだ方が良いな。こちらの動きを察知される前に始末しておくべきじゃ」
「ですね。じゃ、エドマンさん行きましょうか」
そう言うとエドマンは大きく頷き「こちらです」と洞窟までの案内をしてくれた。
木々を掻き分け進んで行くと先を行くエドマンが立ち止まる。
「あそこです」
とエドマンが指差す方向を見ると岩肌剥き出しの絶壁の根元に大きな裂け目が有り、その裂け目の前に二体のゴブリンがいた。
どうやらそこがゴブリンの住処の様であり、裂け目の前にいるゴブリンは見張りといった所だろう。
茂みに身を隠したまま道具袋から新しい小瓶を取り出すとシルフィーに合図を送る。
「今度はこの眠り薬をあのゴブリンと洞窟の中に充満させてくれるか?」
「お易い御用さっ!! このボクにお任せあれ〜」
シルフィーは風を器用に操り俺が指示した通りに見張りのゴブリンを眠らせ、洞窟の中に眠り薬を送り込んだ。
表の見張り役のゴブリンが眠ったのを確認すると後から付いてきた村人の方を振り返る。
どの村人も目は血走っており俺からの指示を今か今かと待ち受けている様だった。
(怖っ! 何その殺気っ! ちょっと怖いんですけどっ!!)
まぁ無理も無い。これまで苦しめられたゴブリン共に復讐が出来るのだ。おまけに先のゴブリンを殺して回った事によって更にアドレナリンが分泌しまくっているのだろう。
「よし、突入だっ!! だが中には捕らわれた女性達がいる可能性が高い! 彼女達の救出を最優先っ! 二手に分かれて救出する班と討伐する班に別れろ」
「「「はっ!!!」」」
「それとカランっ!」
「ロランですっ!!」
「あっ、うんゴメンっ……えっと君達は救出した女性達を荷車に乗せて村まで送り届けてくれ」
出発前に彼に頼んで用意出来た荷車は俺達の荷車も含めて四台。どれだけの女性が捕らわれているかは分からないがとりあえずは十分だろう。
「はいっ!! 分かりましたっ!」
彼もまた出発前とは違い目つきも鋭くなっており、良く見ると服もゴブリンの返り血があちこちに見受けられた。
(いや、だから怖ぇーって……)
「よし、じゃあ行くぞっ!! さっきとは違って中の様子は見えない! 眠りの浅いゴブリンがいるかもしれない! 十分に警戒して進めっ! いざっ突撃ぃいい!!」
俺の掛け声をきっかけに村人が洞窟に向かい突入して行く。俺も村人に続き洞窟内に向かおうとした所、何者かに手を掴まれ引き止められる。
「待てっ、お主はこっちじゃ」
俺を引き止めたのはエリーナであった。
「こっちって何処ですか?」
「良いから着いて来い」
その問には答えてくれずエリーナは元来た道を戻って行く。俺は言われるがままその後を着いていく事となった。
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