第12話 契約
家に帰るとエリーナは薬品の調合をしているようだった。
「師匠ー! 師匠ーっ!! お願いがあります!」
「なんじゃ? 騒々しい。まさかもう採取してきたのか?」
「あっ、いえまだ全部は採取出来てないんですが途中、妖精を拾いましてコイツと隷属の契約をしたいんです!」
そう言って蜘蛛の糸でグルグル巻状態のシルフィーをエリーナに見せた。
「妖精とは……ぬしはまた珍しい物を拾ってきたな……」
「ふえぇぇぇん、助けて下さぁーい」
「助けてとはなんだっ! 俺が助けてやっただろ!」
エリーナは呆れた顔をしていた
「妖精との隷属契約など聞いた事ないぞ。まぁ出来るかと言えば出来るのじゃが……しかし契約の際はお互いの合意が無ければ成立せんぞ」
「その点は大丈夫ですっ! なっ! シルフィー!」
「違いますぅ、無理矢理ですぅー! 」
(ちぃっ! コイツここに来て裏切りやがった!)
「そうか……シルフィー、短い間だったけどこれでお別れだな……」
俺は家の外に出て空を見上げた……
心地よい風が吹いていた……
空にはトンビが何かを狙うように旋回していた……
「ちょっと、ちょっと待って、あなた何考えてるの? まさかっ! えっ、えっ、嘘でしょ?」
慌てた様子のシルフィー
「残念だよ……こんな形で別れる事になるなんて……」
「いやーっ、ごめんなさい! するするっ!契約するから許してぇー!」
ちょっとしたゴタゴタはあったものの無事、俺はシルフィーとの隷属契約を結び契約成立となった。エリーナはシルフィーに向けて
「ぬしも運が悪かったな……」
と憐れむような目で慰めていた。
「しかし良いのか? こんな事をしてて。 まだ採取は終わっとらんのじゃろ?」
「はい、直ぐに採取に戻ります! でも後は幻想茸だけなので何とかなると思います」
「幻想茸ならボク、生えてる場所分かるよー」
(なんとっ! それを早く言えっ!)
とはいえ、ここでシルフィーの力を借りるのは違う気がするのだ。これは俺一人の力でやり遂げなければフェアじゃない。
「シルフィー、有難いけどこれは俺が一人で探さないといけないことなんだ。だから師匠と一緒にここで待っててくれ。師匠、シルフィーの事預かって貰っていいですか?」
「あぁ、別に構わぬよ。それとコレを持ってゆけ」
そう言って小さな道具袋を渡された。中を見てみると干し肉と小さな薬品の入った小瓶かが入っていた。
「師匠……これは?」
「朝、食料を持たずに出て行ったであろう? 干し肉と以前、ぬしが倒れていた時に飲ませた栄養剤じゃ」
「師匠のこういうとこ、本当に大好きですっ!!」
「別にぬしが心配だからとかでは無い! また行き倒れでもしたら面倒じゃからじゃ! ほれ、時間が無いぞ早よ行けい」
「はいっ!」
そう返事をして再び森の奥に向かった。
(ん? あれ? エリーナは今日は薬草の採取に向かうって言って無かったっけ? なんで家にいる? もしかして俺の事が心配で家にいたのか?)
口では冷たくあしらっても、何だかんだで結局は優しくしてしまう。面倒見がいいというのだろうか……性格なんだろう。
でも……
「あの性格なら王宮にいた時代はその優しさに漬け込まれて、いいように使われていたりしたのかもな……」
完全な憶測でしかないが、そんな気がした。そんなエリーナを見て助けてあげたのがマキシムという王子様だったんじゃないだろうかと?
(……いや、知らんけど!)
兎に角そんな優しいエリーナと一緒に暮らすためにも幻想茸を探さねばっ! 日没まであと二、三時間といった所だった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます