第2話 親友はライバルへ

彼はゆっくりと口を開き、しかし真剣な眼差しで私に言った。

「俺、〇〇受けたい」

〇〇とは、現在のプロサッカーリーグ、『Jリーグ』のとあるチームの下部組織であった。

そのセレクションを彼は受けたいと言ったのだ。

前みたく、「一緒に」という訳でなかったのは、私を振り回したくなかったからだと思っている。

当時の私は、彼とのサッカーは勿論、私達のチーム自体が好きになっていた。

彼と一緒に行くか、チームに留まるか。

小さな私にとっては大きな選択だった。


結局、私はチームに留まることにした。

私はチームを勝たせたいという気持ちが、そのときはあったのだ。

一方彼は夢であったサッカー選手に向けて、ステップアップしたいと考えていた。

私は彼の背中を押すほか無かった。


一ヶ月ほどたった時、セレクションに受かったと、彼は嬉しそうに私に電話で伝えてくれた。

当然だ。当時の私はそう思っていた。

しかし、彼が少し遠くに行ってしまったのではないか。そんな不安も抱えていた。


そうして、最強の二人はライバルへとなった。

私の県では四年生の時に県大会がある。そこで必ず戦いたい、それがお互いの思いだった。

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