#331 四次元迷子
しまった……誤って四次元ポシェットに入ってしまった。いつも彼が使っている四次元ポシェット。その中身が気になって、スペアポシェットの中身を覗いていたら、手を滑らせてしまった。中に入るのはこれが初めてなのだが、なるほど、こういう景色なのか。普段彼が使っているありとあらゆる道具が空間に漂っている。それはもう見たことあるものから見たことないものまで。使ったことがあるものから、使ったことがないものまで。
しかし、問題はそこではない。
見つからないのだ。
出入り口が。入ってきたところは、もうどこにあるのかわからない。今は他の道具たち同様、この空間を漂っているだけ。まるで水中の中を泳ぐように移動はできるが、出口が見えなければ意味がない。
どうするか、と顎に手を当てて考えてみる。
自力では無理だとなると、彼に助けてもらうしかない。現実では行方不明になっているだろうから、きっと探してくれるはずだ。
それか、何か道具を取り出すときに彼は手を入れるだろうから、その手に掴まれば脱出できる。
方法はあるのだから、あとは気長に待てばいい。
ゆっくり待てば……しかし、待てど待てど彼の手すら入ってこない。
…………え? これ、脱出不能???
そう思ったとき、この広大な四次元空間が一気に不気味な空間へと変わった。
声も届かない。出口も見当たらない。どこまでも続く四次元空間。
漂うしかない、左右上下もわからない、四次元空間。
ドット汗が噴き出る中、「助けて」と叫び続けるのだった。
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