#330 思い出のオルゴール
「ねえ、それ何?」
私の家に遊びにきていた友人・
「オルゴールだよ」
箱を開けてレバーを取り出して、回してみれば音が鳴るオルゴール。本当にどこにでもある、なんの変哲もない見た目をしている。
思い出がたくさん詰まっている、私の大切なオルゴール。
そう説明すると、芽衣は私の手からヒョイっとオルゴールを取ってしまう。
「へぇ、特別なものなんだ」
彼女はまじまじとオルゴールを見つめる。
気になったものをすぐに自分の手に取ってしまうのは、芽衣の悪い癖だ。初対面の人であれば面食らってしまうけれど、私は芽衣と長い付き合いだからもう慣れている。
「そうだよ。これはね、私以外の人がレバーを回すと、その人の思い出を吸い取ってくれるんだ。その人の楽しかった思い出や、嬉しい思い出。そういった思い出を吸い取って、私に見せてくれる。魔法のオルゴール。あ、もちろん、思い出を吸い取られた人はそれを忘れちゃうんだ。だから、私のものになる」
「……え?」
と、オルゴールを回していた芽衣の手が止まる。
一雫の汗が芽衣の頬を流れる。
私は、満面の笑みを浮かべて言う。
「ありがとう。芽衣の思い出、楽しませてもらうね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます