#327 終末

 それをもし人間にも見えるようにしたら、正確には人間の脳が認識できるようにしたら、髭を生やした男と白い服を着た髪の長い女がいた。

 そこはいわゆるファンタジー世界の物語において、国王が座っている椅子と広間に見える場所。男はきだるそうに、女は淡々と言葉を述べていた。女の言葉を男は時折頷いたり、何かを返したりするだけ。

 その様子はまるで上司に仕事の報告をしている部下のように見える。

 ふと、途中から会話の内容が聞こえてきた。


「それで神よ、あの世界はどうされるのですか?」

「あの世界? ……世界を作りすぎてどれかわからないんだが」

「“地球”と名づけた世界の件です。あの世界は作られてから結構経ちますが、いかがなさいますか?」

 

 神と呼ばれた男はうーんと考える素振りを見せ、


「あ! あれか。わざと不具合を混ぜて、そう、完璧に作らないことでどうなるか気になって作った世界か……あそこから完璧になるかと思ったんだが、落ちるとこまで落ちていきそうだし、もういいか。その世界は徐々に壊していこう」

「そうですか」

「ああ。一気に壊すと、他の神に色々言われそうだしな。異分子や災害、小さなウィルスから入れるんだ。そして、自滅させる」

「作っておきながら、薄情ですね」

「作りすぎてると、思い入れも何もないんだよな。頼んだぞ」

「かしこまりました」


 女が去って行く。

 男は深く背を預けると、


「で、このやりとりを“地球”の人間に見せてみているんだが、これをみた人間はどうんな行動するかな」



 ☆★☆★☆★



 とある街に、神が世界を滅ぼそうとしていると唱える男がいた。

 しかし、誰も男の声には耳を傾けなかった。

 結果、男の死後数十年が経ち、地球は滅びた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る