第18話
******
第四章 水の都 トリトーネ
******
その大地は、かなり
気温は、これまで歩んできた土地よりも少しだけ低下しており、空気を肺に取り込むと
目を
わたしたちが
相当に北上したらしくって、まだ夏前だというのに過ごしやすい温度だった。
そして、わたしの目を引くのは、
まるで湖の上に立てられた都市かと思うほど、水路上に建物が連なっている。どうやらそれがセールスポイントらしくって、観光業が盛んな
わたしが
もうね、テンション上がりまくり。
わたしはマリアと腕を組んで、
人通りの多さ。目を引くお店たち。それから、水路を通るゴンドラ郡。それらがわたしの心を
隣のマリアも、いつになく目を
わたしの後方には、リリウェルとアイシャが並んでいる。
リリは特に
ハーピーは、変わらず街の外で待機。一緒に観光を楽しめないのは、ちょっとかわいそう。早いところ、人間と魔族が仲良く暮らせるようにしないといけないね。
「さてと。あたしはテキトーにブラついてくるから。アイシャのこと、よろしく~」
リリはそう言うと、わたしたちの返事は待たずして歩き出す。
彼女の見た目は、通りを歩く若者と比べてもなんら
「ちょ、ちょっと、どこ行くんだよ。この後の予定はどうするの?」
わたしが呼び止めると、リリは
「どーせ、レーネを待っている間はすることないかんね。テキトーに一週間は遊んでおいで。あたしも、勝手に遊ばせてもらうから。あんたたちと違って、あたしは欲求不満なのよ」
あてつけのように言い放つリリに反論できなかった。
だって、わたしとマリアは道中でも
見た目は年頃の女の子であるアイシャなので、ビジュアル面に不満はなさそうだけど。精神年齢はわたしと同じかそれ以下だし。性知識もないからね。下手に手を出して、ドラゴンになって暴れられても困ったのだろう。
「え、でも……」
見ず知らずの街にいきなり放り出されても、わたしとしても困ってしまう。
しかし、わたしの戸惑いなどガン無視したリリは、そそくさと人混みに
待ち合わせ場所も指定しないでどっか行っちゃうんだもん、合流に問題が起きたらどうしろっていうんだよ。それに、この街で、騎士のお姫様・レーネが来るのを待たないといけない。
すれ違う可能性も
「エステル? とりあえずホテルでも探しますか? それとも、ご飯にします?」
「あ、ああ……。どうしよっか。アイシャはお腹すいた?」
わたしが振り返って質問してみると、アイシャはふらふらと
放っておいたら、
もし、街中でドラゴンになってしまったとしたら
「すみません。こっちのほうからいい匂いがしたものですから、つい」
アイシャは、匂いに釣られた
アイシャに合わせて、マリアの
「確かに、美味しそうな匂いがしていますね。エステル、行ってみましょうか?」
「じゃあ、そうしよっか。途中、よさそうなホテルがあったらそこに部屋を取ろうね」
「はい♪」
マリアはいつだって上機嫌。旅の疲れも感じさせない。
長旅ではあったけれど、大半はハーピーの背中に乗せてもらっていたマリアは、体力の消耗は激しくなかった。といっても、毎朝毎晩、全員分の食事を作っていたりして、大変ではあったはずだけど。それでも、マリアも生活には慣れてきたようだ。
わたしたちは、匂いの元である大通りに向かって歩を進めた。
そこはまるで、パレードでも
ぶつかりそうになる人の波を
すると、匂いの発生源が出現した。
アイシャが一目散に駆け出す。
わたしとマリアは、顔を見合わせてくすくすと笑った。
だって、普段は無表情でクールなアイシャが、美味しそうなものを見ると犬のようにはしゃぐのだから。
アイシャが駆け寄ったのは、
お外で販売している、食べ物のお店だ。その場で調理して、その場で販売する出店は、大通りでの客寄せにぴったり。
この出店では、焼き鳥なるものが売られていた。
焼いた
わたしたちは大量に焼き鳥を購入し、隣のベンチでいただくことにした。
買った量があまりにも多かったためか、お店のお姉さんはおまけをしてくれる。頭に布を巻いて腕まくりしていたお姉さんは、男勝りの綺麗な人だった。
「お客さんたちは、観光かい?」
気分の良い食べっぷりを見せるアイシャを
わたしも、口元についたソースをマリアに
「ええ、私たち、今日来たばかりなんです。どこかおすすめの観光スポットとか、ホテルがありましたら教えていただけませんか?」
マリアが、わたしの身だしなみを整えながら応対する。
お姉さんから見て、わたしたちはどのような関係に見えるのだろうか。どうせ、仲良し姉妹とかにしか思われないんだろうな。
マリアとお店のお姉さんは、同年代くらいだろう。マリアは結婚指輪を
お店のお姉さんは、
マリアは、こんな大都市の中でも
「お嬢ちゃんたちは可愛いからね。特別に穴場を教えてあげるよ。ホテルはそこの向かい側の店が安くていいよ。って言っても、うちなんだけどね、ははは」
出店のお姉さんはかなり気さくなのか、
まあわたしとしては、ホテルなんてある程度
焼き鳥屋さんは
「あー、後、観光スポットといえば、
「聖域?」
聞き慣れない単語に、わたしは
勇者業でお金を稼いでおいてよかった。大食らいがいても、
リリも魔族のくせに、やけにお金は持っていたな。どうやって稼いでいるのか聞いておけばよかった。
「この街では有名なんだけどね、まあ平たく言えば教会みたいなもんさ。綺麗な場所だから、観光スポットとしても人気だよ」
「教会かぁ……」
わたしは、興味を失ったように、通りを歩く人々に目を向けながら
教会って単語は、どうにも
すると、
「エステルったら、わかりやすいんですから。エステルは教会だと退屈しちゃうんですよね♡」
小馬鹿にされたような
「はっはっは、そんなに教会っぽい場所じゃなくて、普通に綺麗な建物だから、暇だったら覗いてみるといいさ」
ま、頭の
その他に、お姉さんは食事処や観光スポット、マーケットの位置などを教えてくれる。
説明をしっかりと聞き
お世話になった相手だし、一週間ほどは、お姉さんの家のホテルを予約する。
部屋は、一応二部屋とった。
マリアとえっちしたいから……ではない。
しかし、わたしたちがホテルの部屋に入ろうとしたとき、アイシャは自主的に隣の部屋に移動しようとしていた。
「アイシャ、一人部屋がいいの?」
ドアノブに手をかけたアイシャは、首だけをわたしに向けてくる。彼女の表情からは、何も
「いえ。夜はおふたりの邪魔をしてはいけないと、リリちゃんに教わっているので」
わたしは
リリめ、純情なアイシャに何を教えているんだよ。とはいえ、
「あ、ははは……。じゃあ、どこか出かけるときとか、お腹が減ったらノックしてね」
「はい。えっちの最中には
わたしは、今度こそ空気を吹き出した。
一体、何をどこまで聞かされているんだ、アイシャ。えっちなことについて、詳しくわかるのだろうか。しかも教えたのがリリだとしたら、女の子同士のえっちにばかり
「女の子同士の交尾に興味はありますが、間に割って入ってはいけない、と念を押されていますので」
「うふふ、アイシャちゃんが良い子でよかったですね、エステル♡ エステルは夜だと元気いっぱいですからね」
「も、もういいでしょ、その話は! それじゃ、また明日美味しいもの探しにいこうね」
かくして、水の街トリトーネの一日は終わりを告げる。
一週間、食べ歩きするぞー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます