魔女と鉱夫と防災ローブ

 物が散乱した店内を、気だるそうに掃除をしている女性がいた。

 とんがり帽子を被ったその女性は、床に散らばった紙屑を帚でまとめている。

 彼女が紙屑を全て集め終わる頃、店の扉が開く。

 中に入ってきたは、ずんぐりむっくりとしたドワーフだった。

 髭がモジャモジャと生えている。


「あら、鉱夫さんが、こんな所に何の用かしら?」

「ちょいと面倒な事になっちまってなぁ。いい魔道具がないかと思ってきたんだ」


 赤ら顔のそのドワーフは女性の近くまで歩いてきて、彼女を見上げる。

 気だるげな女性はカウンターの方に招くと、自身は椅子に座って足を組んだ。


「それで?」

「今度貴族のボンボンが俺たちの職場に来てミスリルを取りたいと抜かしやがったんだ。俺たちゃ~別にそいつがどうなろーがどうでもいーんだけどよ、流石に何かあったらやべぇだろ?」

「そうかしら?」

「そうなんだよ。だから、足を滑らせて高い所から転げ落ちたり、頭上から物が降ってきても問題ねぇ物があるといいんだが、そういうのはあるか?」

「結界じゃ駄目なのかしら?」

「まだ会った事がねぇけどよ、どーせこっちの言う事を聞かずに好き勝手動き回るだろうから、結界じゃない方が良いな!」

「そうさね……物理的なダメージを防ぐって事であれば、アレが良いかもしれないさね」


 女性が杖を振ると、彼女の後ろに会った大きな棚の引き出しの一つが開いた。

 中から出てきたのは、フードが付いたもこもこのローブだった。


「なんだこれは?」

「防災ローブ、だったかしら。頭上から何かが落ちてきた時にはフードについているもこもこが増えて防いでくれるさ。周囲からの衝撃も、ローブについているもこもこが膨らんできっと防いでくれるだろうよ。ただ、気をつける事さね。打撃にはめっぽう強いが、それ以外には意味がないからね」

「分かった」


 ドワーフは代金を支払うと、コートを受け取ってノッシノッシと出て行った。

 数日後、どこかの貴族のドラ息子が、穴に落ちた先にあった罠に突き刺さって大怪我を負ったらしい。

 気だるげな女性はその噂を聞いて、呆れた様子でため息をつくのだった。

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