魔女と客と魔道具
みやま たつむ
魔女と衛兵とインスタントホムンクルス
物が乱雑に置かれた店内で、のんびり店番をしている女性がいた。
うつらうつらとしていた彼女は、とんがり帽子を目深にかぶり、暗い雰囲気を漂わせている。
何かに気づいたのか、気だるそうに目を開いて、入口の方に視線を向けた。
ちょうどそのタイミングで扉が開いて、一人の男が入ってくる。
「衛兵さんがこんなところに何の用なんだい?」
「ちょっと人手が必要でな。インスタントなんとか、ってやつをくれ」
男の言葉に怪しげな笑みを浮かべる女性。
女性の背後にあった大きな棚が勝手に開くと、ふわふわと瓶が女性の手に収まる。
「インスタントホムンクルスだよ。商品名くらい覚えておくれ。どのくらい必要なんだい?」
「あー……広い所を清掃させる場合はどのくらいいるんだ?」
「さあねぇ。試した事がないから。ただ、使い終わったらきちんと処分しといてくれよ。じゃないと――」
「分かってる。とりあえず、10くらいくれ」
「……はいはい」
商品を受け取ると、男は足早に出ていった。
女性はお金を丁寧にしまうと、ため息をついた。
「本当に、分かっているんかねぇ。きちんと処分しないと、数日くらいで自我を持って厄介なんだけどねぇ」
まあ、私には関係のない事か、と女性は大きく伸びをしてまた転寝をし始めた。
数日後、下水の清掃をサボった衛兵が失踪したらしく、調査のために何人か男がやってきたが女性は何も言わずに追い出した。
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