少年と少女が紡ぐ、普通でピュアな初恋デート

千歌と曜

第1話

――今度の日曜日、デートしない?


「え、なに?」


 びっくりして、スマホをとり落としそうになる。

 だって、悩んで悩んで送れずにいた内容と全く同じ文面が、画面に躍り出たのだから。


 お風呂の上りのパジャマ姿。今日は大好きなバンドの新曲が泣けるくらい心に響いて、コンビニのくじで好きなキャラのフィギアが当たって、普段はお母さんが滅多に使ってくれない高級な入浴剤だったから、イケるイケると自分を鼓舞し、ベッドの上でスマホを握りしめて1時間以上も右往左往……その果てに待ち受けていた、思いもよらない幸せ。


「え、なんで? ……相馬くんで、そう、だったの? ……わかんないよ~!」



――今度の日曜日、デートしない?


 そんな、ありきたりでなんの捻りもない簡素な誘い文句を送ってから、十分後……いまだに、千咲ちゃんから返事は来ない。


「やっちゃった! やっぱり、送らなければよかった!」


 勉強机の椅子からどさっとベッドにダイブして激しく後悔する。

 今日は学校の授業で先生にあてられてもちゃんと答えられて、帰りの本屋でお気に入りの漫画を見つけられて、応援しているサッカーチームが見事なハットトリックを決めたのをテレビで見て……イケると思ってしまった。


 学校の課題を片付けながら、それでも頭の中は好きなあの子をデートに誘うことでいっぱいで、必死に文面を考えて……ああ、やっぱり、やめておけばよかった。

 明日からどんな顔で会おう? もしかしたら、クラスで噂になるかも――ぽん♪


「っ」


 ――いいよ


「うわ……え、ホントに?」


 何度送り主を確認しても、同じクラスの可愛い女の子からのOKの返事。


「……やった」


 夢のような出来事に。喜びよりも脱力がまさってしまう。しばらくベッドから起き上がれず、少年は天上を見上げるのだった。



「OKしちゃった……どうしよう!」


 そうして、少女はベッドの上でばたばたと足を振っていた。

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少年と少女が紡ぐ、普通でピュアな初恋デート 千歌と曜 @chikayou

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