少年と少女が紡ぐ、普通でピュアな初恋デート
千歌と曜
第1話
――今度の日曜日、デートしない?
「え、なに?」
びっくりして、スマホをとり落としそうになる。
だって、悩んで悩んで送れずにいた内容と全く同じ文面が、画面に躍り出たのだから。
お風呂の上りのパジャマ姿。今日は大好きなバンドの新曲が泣けるくらい心に響いて、コンビニのくじで好きなキャラのフィギアが当たって、普段はお母さんが滅多に使ってくれない高級な入浴剤だったから、イケるイケると自分を鼓舞し、ベッドの上でスマホを握りしめて1時間以上も右往左往……その果てに待ち受けていた、思いもよらない幸せ。
「え、なんで? ……相馬くんで、そう、だったの? ……わかんないよ~!」
♤
――今度の日曜日、デートしない?
そんな、ありきたりでなんの捻りもない簡素な誘い文句を送ってから、十分後……いまだに、千咲ちゃんから返事は来ない。
「やっちゃった! やっぱり、送らなければよかった!」
勉強机の椅子からどさっとベッドにダイブして激しく後悔する。
今日は学校の授業で先生にあてられてもちゃんと答えられて、帰りの本屋でお気に入りの漫画を見つけられて、応援しているサッカーチームが見事なハットトリックを決めたのをテレビで見て……イケると思ってしまった。
学校の課題を片付けながら、それでも頭の中は好きなあの子をデートに誘うことでいっぱいで、必死に文面を考えて……ああ、やっぱり、やめておけばよかった。
明日からどんな顔で会おう? もしかしたら、クラスで噂になるかも――ぽん♪
「っ」
――いいよ
「うわ……え、ホントに?」
何度送り主を確認しても、同じクラスの可愛い女の子からのOKの返事。
「……やった」
夢のような出来事に。喜びよりも脱力がまさってしまう。しばらくベッドから起き上がれず、少年は天上を見上げるのだった。
♡
「OKしちゃった……どうしよう!」
そうして、少女はベッドの上でばたばたと足を振っていた。
少年と少女が紡ぐ、普通でピュアな初恋デート 千歌と曜 @chikayou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。少年と少女が紡ぐ、普通でピュアな初恋デートの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます