第24話 災いをもたらす黒髪の娘

 舞はブラックと久しぶりに会うことが出来たのだ。

 実は舞は学校を出た時には、すでにブラックの気配を感じていたのだ。

 舞は普通の人間ではあるのだが、色々な気配には以前から敏感な部分があった。


 

 私はケイト達と校舎を出たところで、驚く事にブラックの気配を感じたのだ。

 アクアがバラしたに違いない・・・

 もちろん、この後魔人の国に行くつもりだったのだが、こんな形で会うとは思わなかったので、どう話そうかと悩みながら歩いていたのだ。

 ケイト達と一緒だったので、そこでブラックが出てきたら・・・そんな事を考えていたのだ。


 だが予想が大きく外れ、私達の前に現れたのは見ず知らずの三人組だったのだ。

 その者達の手には大きな剣が握られていて、今にも襲いかかってきそうだったのだ。

 そして彼らの目線は明らかに私を向いて、何やら呟いたのだ。


『災いをもたらす黒髪の娘・・・』


 そう・・・聞こえたのだ。

 いったいどう言う意味・・・

 その時、彼らを見たケイトが悲鳴を上げて、私にしがみついたのだ。

 まずいと思ったと同時に、目の前の三人が黒い衝撃の波に吹き飛ばされたのだ。

 何が起きたが分からなかった三人は、やっとのことで起き上がりそのまま走り去ったのだ。

 そして衝撃波が来た方向を見ると、深くフードを被りマントを羽織った人が歩いて来た。

 顔は見えなかったが、その気配は明らかにブラックだったのだ。

 私がじっと見つめると、フードを取り頭をかきながら下を向いたのだ。

 誰だかわからない者達に襲われた直後なのに、何だか照れてる様にも見えたブラックを見て、私は可愛いとも思ってしまったのだ。

 やっぱりずっと会いたかったのだ。


 

 とりあえずこのままケイト達を帰すのも心配だったので、一度学校に戻り先生達にこの事の報告をするように、彼女達に話したのだ。

 それにしても、明らかにさっきの三人は私を狙っていた。

 それだけでなく、昼間の黒い影の集団の件、『指輪に宿りし者』から聞いた話、誰かに見られていた様な気配・・・

 心配な事が山積みだったのだ。

 私はブラックに大事な話があると告げ、場所を移動する事にしたのだ。

 色々質問したそうなケイト達を残し、私達は隣の城へと向かったのだ。

 学校と城はバラの回廊の様なもので繋がっていた。

 その途中広い公園があったので、私とブラックはそこの芝生に入り腰を下ろしたのだ。

 私は横に座っているブラックを見ると、何だかドキドキしてきたのだ。

 何ヶ月ぶりだろう。

 ブラックにとってはその三倍の時間が過ぎているのだ。

 今も私を以前と同じように思ってくれているのだろうか・・・

 私の勝手な都合でブラックに会わなかったのに、そんな心配も実はあったのだ。

 けれど、私を見つめるブラックの目を見ていたら、ブラックは私の手を大きな手で包みこんでくれたのだ。

 そしてブラックの顔が近づき、そんな不安をあっという間に吹き消してくれたのだ。

 まるでブラックが私に魔法をかけてくれた気分だった。


 だが、今回はそんな雰囲気を味わうためにここに来たわけではなく、大切な話が沢山あったのだ。

 私は気持ちを切り替えて、これまでの事を全て話した。

 話し終えると、ブラックは何か考えている様だった。

 ・・・当たり前なのだ。

 私の事や黒い影達については想定内の話でも、『指輪に宿りし者』の話はブラックですら、想像する事が出来ない話なのだから。

 ブラックは少し考えた後、口を開いたのだ。


「まさかそんな話が出ると思わなかったので、言葉が出ませんでした。

 ただ、今すぐに考えなければいけない事は、舞の安全です。

 あえて舞を狙ってきていると考えると、もしかしたら舞が別の世界から来た事を知っている、何者かの意図があるのかもしれません。

 正直言うと・・・昔のことを思い出しました。

 ですが、絶対に私が守ります。

 舞も無理はしないように。

 何かあったらすぐに言うのですよ。

 自分で勝手に動かないでくださいね。」


 ブラックが言いたい事が少しわかったのだ。

 以前、魔人と人間の戦争が起こった時の事を思い出したのだろう。

 あの時、ブラックはとても辛い思いをしているのだ。

 でも、私はあの時のハナさんとは違う。

 自分で身を守るすべを身につけなくては・・・

 ブラックは心配するかもしれないが、私は私自身で影で暗躍している者がいるなら、絶対に探してみせると思ったのだ。

 

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