第23話 再会
魔人の王であるブラックは思い悩んでいた。
ユークレイスから聞いた話は、私にかなりのダメージを与えたのだ。
もちろん、この世界から人間の国に黒い影の集団が行ってしまった事は問題ではあった。
しかしそれと同じくらい、いや不謹慎ではあるがそれ以上に、舞がこっちの世界に来ている事を私に黙っていた事がショックだったのだ。
ユークレイスから、落ち着いたら連絡するつもりだと言う事は聞いたが、ある意味私の存在が邪魔になると思っていたのだろうか・・・
魔人の国の王として、もっと考えなければいけない事があるのだが、そうは上手くいかなかったのだ。
そして、ユークレイスから舞の話を聞いた翌日、また心配な状況になったのだ。
舞に送ったペンダントの魔力がまた減った事を感じたのだ。
幹部達は今はこの国にいるわけで、前回とは違う。
また何かあったのではと、私は不安になったのだ。
考えても仕方がないので、私は舞に会うために人間の国に行く事を決めたのだ。
もちろん、ネフライトや他の幹部には内緒でだが。
後で何か言われそうだが、まずは舞と会わないと何も手につかない状況だったのだ。
舞が行っている学校は、人間の世界にあるサイレイ国の横にあると聞いたのだ。
私が急に人間の城の近くに行くのも問題かもしれないので、なるべくわからないように行くことにした。
そしてマントを身に纏い、顔がわからないようにフードを深く被ったのだ。
私は洞窟を抜けると、瞬時にサイレイ国の城の近くまで移動した。
今まで気付かなかったがその横に大きな建物があり、そこが舞の行っている学校らしい。
ちょうど学生達が、授業が終わり出てくる時間だったのだ。
私は気付かれないように、少し離れたところから舞が出てくるのを待ったのだ。
だがその時、嫌な気配を感じたのだ。
とても攻撃的で、あからさまな敵意を感じたのだ。
魔力探知を働かせると、その気配は私のちょうど反対側からで、目視する事は出来なかった。
その者は私と同じように隠れているようだった。
誰かを襲うつもりなのだろうか・・・
何か危険な事が起きるのではと、警戒したのだ。
そんな時に長い黒髪を一つにまとめた、大きな黒い瞳の女性が出て来たのだ。
数人の友人と思われる人達と楽しそうに話していたのだ。
久しぶりに見る舞の姿に、私は顔を自然と緩めたのだ。
この世界では舞の姿はとても珍しく、相変わらず周りの目を引いていたのだ。
そして私もその一人だった。
だが、その時である。
さっきから危険な気配を出していた者達が、飛び出して来たのだ。
事もあろうか、舞の前に現れたのだ。
それもその手には長い剣を携え、今にも振り下ろそうとしていたのだ。
それを見た舞の友人が悲鳴を上げたのだ。
私は急いで左手をその長い剣を持っている者達に向かわせ、軽い衝撃波を送ったのだ。
人間を相手にするため、その辺は手を抜いたのだ。
それでも、その者達は軽く数メートルは飛ばされて、何とか起き上がると、急いで逃げて行ったのだ。
舞が大事に至らなくてよかったとホッとしたのだ。
あの連中の目的はわからなかったが、人間の王に報告しなければならないと思った。
振り向くと、悲鳴を上げた彼女はペタリと座り込んでいたのだが、舞はじっと私を見ていたのだ。
私は心配で舞達の元に向かったのだ。
「ああ、実は舞に渡したペンダントの魔力が減ったのが心配で・・・
元気な姿を見れればそれだけで良かったのですが・・・」
こんな風に会うつもりは無かったので、何となくきまりが悪かったのだ。
すると舞は私の近くに来てマントを引っ張ったのだ。
「こんなのを羽織っててもすぐにわかるわ。
ブラックの気配は見えなくてもわかるんだから。
助けてくれてありがとう。
それと、ごめんね・・・アクア達から聞いたのね。
本当は・・・すぐに会いたかった。」
私はその言葉が聞けて安心したのだ。
そして、周りに学生達がいるのも関係なく、私は舞を抱きしめたのだ。
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