第19話 痛い視線
舞は城から帰ってきたカクとヨクに、真剣な顔で大事な話がある事を告げたのだ。
私は二人に『指輪に宿し者』から聞いた事を話したのだ。
ただこの話は異世界の事に関わる話なので、私の本当の素性を知っている者、つまり王のみに伝えるべきだと話したのだ。
特に『指輪に宿し者』が口止めをしたわけではないが、誰にでも話して良い事で無いのは、よくわかっていた。
彼等の意志に背く事があれば、多分彼等からの助けが得られないだけでなく、もっと大変な事になる様な気がしたのだ。
だから、彼等にはいつも誠実でなければいけないと思うのだ。
「・・・なるほど。
この世界の創造を知る者・・・この歳になっても驚く事ばかりであるな。
想像を超える話で、すぐには理解出来ない自分が情けない・・・」
私が話し終えると、ヨクはそう言って目を閉じて何か考えているようだった。
「舞、でも何でその『指輪に宿し者』は・・・人形? ぬいぐるみというものだっけ?
それを希望したのだろう。」
カクは壮大な話より、そこが気になったらしい。
「それはよくわからないけど。
でも、美しいものや綺麗なものが好きと言っていたわ。
可愛いものも好きなんでしょうね。」
何だか的外れなコメントに、私は少しホッとしたのだ。
正直、自分一人では受け止められない話だったので、一緒に話が出来るカクやヨクがいて良かったと思ったのだ。
カクの言葉で緊迫した空気が和んだのだ。
「それにしても、その黒い影達の弱点が強い光と聞けて良かったのう。
これで少しは対策が取れるかもしれない。」
ヨクは満足げに話したのだ。
今思えば、これまで黒い影達が出現した時は確かに明るい日差しの下ではなかった気がするのだ。
曇っていたり、夕方だったり、木々で覆われた森の中など、強い光とはかけ離れた時であったかもしれない。
オウギ王との連絡はカクとヨクに任せるとして、やはり魔人の国に行って話をしに行かなくてはと思ったのだ。
「明日、授業が終わったら魔人の城に行ってきます。
森の精霊にも聞いた事を伝えてきます。
彼らには聞く権利があるはずですから。
オウギ王には二人から話してもらえたら。」
「勿論だ。
早速明日オウギ様の元に行き、対策を考えるとすることにする。」
○
○
○
私はその夜はなかなか眠れなかった。
昼間に『指輪に宿し者』から聞いたことが頭から離れなかった事と、久しぶりにブラックに会う事が出来るのが楽しみでもあり、目が冴えていたのだ。
ベッドに入ったはいいが寝付けなかったので、何か飲み物を飲もうと一階に降りたのだ。
その時、何か痛い視線を感じたのだ。
気になる方向を見ると、客間の窓から誰かが覗いていた様な気がしたのだ。
急いで窓に駆け寄ったが、そこからは何も見る事は出来なかった。
気のせいかとも思いたかったが、確かに何者かの気配をあったのだ。
その後ヨクとカクを起こして、お屋敷の周りや薬草庫の中など調べてもらったが、特に怪しい事は無かったのだ。
だが、自分で言うのもなんだが、何故か嫌な感覚には敏感で、今まで外れた事は無かったのだ。
私はベッドに入ったが、余計眠れなくなっていた。
その時、胸元が温かくなったと思ったら、優しく光り出したのだ。
そうだ、彼のところにわざわざ行かなくても会える手段はあったのだ。
首からぶら下げていた小さな袋から、光る種を一つ取り出し手のひらに置くと、小さな精霊の姿に変わったのだ。
そしてみるみる大きくなり、私よりも背の高い綺麗な青年の姿になったのだ。
その青年は私の手を取り、優しく見つめたのだ。
「舞、お久しぶりですね。
何かあったのですか?
舞の不安な気持ちが私に伝わってきましたよ。
あれ、ここは・・・こちらに来ていたのですね。」
以前もらった小さな種は森の精霊の一部なのだ。
私が種を手に取り願えば彼を呼び出せるのだが、私の心に反応して精霊の方からも来てくれることもあるのだ。
そして今回は私の不安や心配な気持ちが伝わった様で、彼の方から来てくれたのだ。
「色々あったの・・・
本当は明日森に行こうかと思っていたのよ。
でも、あなたとは種があればいつでも会えたわね。」
私はまた精霊に会えて、とてもホッとしたのだ。
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