僕の美学

@kunishiro_1066

第1話 人生

6時。目を覚ます。外は少し明るく、鳥のさえずりが聞こえる。

鉛のように重い足を連れて洗面所に向かい、鏡をのぞく。

洗面台に前かがみによっかかりながら鏡の向こうの自分におはようとつぶやき、鏡に向かって微笑んでみる。鏡の向こうの人物もぎこちなく不自然に微笑み返してくる。

「はあ、」とため息をつき歯ブラシを咥える。

鏡を見るといろいろと思うことがある、自分がどういう顔でなのかが客観的に見えるからだろうか。毎日自分が思っていた自分とは違っていてその差に戸惑う。自分が話している様子を動画にとり、後から見ると自分が思い描いていた自分よりずっとひどい自分が写っていることが多くある。声色も、表情も。

それなのにどうして主観とこんなにもずれが生まれるのだろうか。

それはみんな一人一人がそうであってほしい自分の形を思い描いているからだと僕は思う。

そしてみんな自分の理想を持っている。どんな人にも。理想があるから今の自分の形を推測して、現実を見てそれとの差を知って自分に落胆して、生きるのすらいやになる。でもその差に気付くのも、落胆するのも自分が一生懸命やっているからではないかと思う。


そんなことを考えている間に僕は制服に着替えおわっていた。

玄関で靴ひもを結びながらそばに置いてある鏡に目をやると、

上下真っ黒な学ランとズボン。揺るがない漆黒の黒の布に包まれるのは

淡く、はっきりしない心象の思春期真っ只中の中学生がいた。

なぜか、いや、自分の理想とは対照的な鏡の向こうの自分に苛立つような落ち着かない、ざわつく心をなだめるように「はあ、」とため息を吐いた。

「俺はがんばってる。今日も頑張ろう。」

一言自分に囁き、重い腰を上げ外開きのドアを開けた。


中学三年生   神田 優。 僕のいままでの、そしてこれからの人生を綴る。

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