私はこの艦隊の司令官だ

砦二光

Prologue

0話 AIの導入による戦争の変化とこれから

AI自体は枯れた技術であり、必要な分野に関しては利用をする形でした。AIは人類の有史以来、早い段階で早熟した技術でしたが、人命を伴う選択を持つ分野に関しては、責任能力を踏まえて、AIは使われず、人間が担当していました。


しかし、西暦10000年に当時の覇権国家であった帝国が一部の治安維持用の艦艇に、AIによって自動化されたコルベットを採用し、実際に配備しました。国際社会から大きな批判を受けることを承知で、帝国が自動化、人員削減を行ったのは、帝国が戦争に伴う、人員の育成コストの削減を進めたかったからだと言われています。実際、300年以上戦争を続けていた帝国では人的資源が尽きていました。


私がここで述べたいのは、人的資源のような補充の効かない資源に関して、代用できる安価な資源があればそれを使用することには、もっともな合理性があるということです。しかし、結果的にはこのAIを使用した艦隊を使用したことにより、対帝国の包囲網が作られ、帝国は敗北、5000年間そのつけを払うことになります。


また、大きな転換点がやってきます。西暦19000年に国際連合でAIを使用した艦隊の運用、またその位置づけに関して議論が行われます。会議での賛成派と反対派ははっきり分かれました。AI艦隊に関してトラウマを持ち、使用を拒否する帝国派と、その帝国派の敵勢力である反帝国派です。結局会議は、多数決によって反帝国派が勝利し、AI艦隊に関する、国際条約が作られます。条約の内容としては「完全自立型の戦闘艦を伴う艦隊は、戦闘とその運用に伴う責任者として、人工ではない生命体を艦隊に1人配備する」という内容です。要するに、「AIの行う行動に関しては1人以上の人間が現場で責任をもって決めろ」というものです。


これによって、人類は戦争によって人命が失われることはほとんどなくなりました。講和交渉の際に無理な要求でもされない限り。つまり、戦争の引き際を理解しておけば、戦争で人は死ぬことはなくなりました。代わりに失うものは人のいない抜け殻の戦闘艦です。


総括です。


こからは、AI艦隊によって行われる戦闘は、絶対的に双方のAIはミスを減らすようになるので、より多くの艦の数を用意できた国家が勝てるようになるでしょう。


【補遺】

█████による、ある新聞記事のコラム。のちにこのコラムを書いた人物は、謎の死を遂げる。その際、この新聞記事もデータベースから抹消される。


少し、ほかの記事を読んで見る。


『合州国、ついに完全に包囲か?』

先日、ブラム王国とアレア共和国が対合州国包囲網に加盟しました。これにより、合州国は自国に接するすべての国と交戦状態に入りました。合州国は大量破壊兵器の疑いをかけられ、M38人民共和国を中心とする列強に対包囲網を課され経済制裁を受けましたが、それでも疑いを否定しました。そのため、合州国は数十カ国と同時に交戦状態になりました。合州国は数日で降伏するものと考えられていましたが、合州国は想定上に抵抗しました。結果、1000年が経過した今でも、合州国は戦い続けています。今回の加盟で、合州国は他国から資源を輸入することが出来なくなりました。専門家の間では、これが決定打になるという意見もあれば、この程度の事をしてもあの国の国内で全ての資源をカバー出来るという意見もあり、同一の見解を出せていません。


『この戦争で合州国はどれだけの艦船を出撃させているか?』

この1000年続いても終わらない戦争の謎は何か、それは合州国の異常な継戦能力だ。あの国と一方の包囲網では、合州国10兆人に対して、対包囲網側は1京人であり。GDPは、1000000000倍の差をつけています。にもかかわらず、合州国は降伏の兆しを全く見せません。それはなぜでしょうか?あの国の艦船を計算したところ、300兆隻前後いることが分かりました。対包囲網側の合計は350兆隻です。この謎は解決の兆しはありません。


『列強各国、対合州国包囲網諸国に新型主力艦の提供を決定』

今日、連邦、帝国などの列強各国は、対合州国包囲網諸国に最新鋭の主力戦艦を提供することを決定しました。これには、従来の1億倍の処理速度を誇るコンピューター、まだ列強各国でも生産が難しい大量破壊兵器が搭載されており、列強各国は、「この戦争に決定的な終止符を打つ」と発言しています。


『列強の最新鋭主力戦艦、撃破される!?』

本日、対合州国包囲網の代表国である、人民共和国は新たに供与された最新鋭戦艦、「アナイアレイシャン(恒星破壊)級戦艦」として提供された1万隻全てが、撃沈されたということです。


『列強各国、合州国をめぐり対立』

列強各国では、先日の新鋭戦艦を合州国が全て撃破したということを重く受け止め、「合州国を我が国と同等かそれ以上の脅威として認識している」と声明を発表し、合州国に関して様々な戦争計画を準備することが議会で議論されることになりました。



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