俺、女だよ?

きみとおさる

第1話

「お姉ちゃん、強すぎだよ〜」

「手加減する訳ないじゃん。ほら、始まるよ」


私はイオリ。弟のリクと一緒に有名なゲーム、『イレギュラーワールド』をプレイしている。

世界に蔓延るモンスターを狩ったり、モンスターに支配されてない土地で店を開いてほのぼの過ごしたり、自分で村をつくって、住民と過ごしたりできる、幅広いゲームだ。


今は、どっちが多いモンスターを狩れるかバトルしていた。

私のほうが強い装備だし、やっている時間も長いからリクよりも強い。


「よっし、また勝った〜」

「も〜、手加減してよお」

「ちょっと休憩ね。」


キッチンへ移動し、冷やしてあった麦茶を飲み干す。

ふー、美味しい。

2時間ほどぶっ続けでゲームをしていたから頭が痛いけど、美味しい。

ずっとソファーに座っていたから足がふらつく。


バタッ。


あれ、転んだけど、痛みを感じない…。

あれ――――




「イオリ様、初めまして。」

「………ん。」

……ここは?どこ?

体を起こすと、目の前に見慣れた美女がいた。

「セレンと、申します。」

…セレン?あの?

周りを見渡すと、広い草原に、ポツリと小屋が1つ。どこかで見たことがある光景だ。

「今日から、あなたにお供させていただきます。」

………あ。

ここ。

この人。

この小屋。

「イレギュラーワールド」の初期の。

「最初の草原ファーストステップ」だ。


イレギュラーワールドのモンスターを1人で狩ってストーリーを進めるモードを始める時、

男キャラプレイヤーにはセレンが、

女キャラプレイヤーには、イケメンのルーカスがパートナーとしてつけられ、冒険を進めることになる。


私は唐突に、自分が男キャラでプレイしていたことに気づいた。

だからセレンなのか。


「イオリ様、お返事は…?」

「あっ、はい!」


私はすぐに喉を抑えた。声が低い。

髪も短い。胸板も厚くなっている。

陰部も…………。


完全に男になっている。

「じゃあ、行きましょうか。」

「う……」

「何か、いやなことがありますか?」

「い、いや、何でもない。」

「そうですか。じゃあ、行きましょうか。」


いつまでこの姿でいるのかはわからないが、とりあえず、イレギュラーワールドの世界。冒険してみるか。

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