第72話 メルタ出発前の一コマ -お金を掛け過ぎましたね-
「リョージ様、正座」
「えっ?メルタさんもカレナリエンと同じパターン?もう、テンプレに登録してもいいんじゃ無い?」
メルタに正座を命令されて、ブツブツ言いながらも正座をした亮二に対してメルタはお説教を始めた。
「リョージ様、いいですか!初心者冒険者の武器は金貨100枚もしないんですよ!普通の人達が10年近く掛かって稼ぐ賃金を丸々使った武器を持つ初心者がどこにいるんですか!」
「だって、メルタさんに怪我して欲しく無いし、ちょっとでも早くランクアップして欲しいじゃん」
正座の姿勢で見上げるような視線でメルタを見つめると「心配なんだもん」と言わんばかりの拗ねた口調で言われたメルタは、亮二が自分の事を心配しているのをひしひしと感じて、それ以上何も言えなくなってしまった。
「こほん、リョージ様。私のために作って下さった武器は有り難く頂きます。ちなみに武器とは別に防具も作られる予定なんですか?」
「もちろん!よくぞ聞いてくれました!メルタさんの為に軽くて丈夫な物にしようと思ってミスリルの服とか色々と用意するつもりだよ!」
話題を変えようと話を振ったメルタに対して満面の笑みで返ってきた答えを確認し、メルタは説教をそのまま続ける事を決めるのだった。
□◇□◇□◇
「足が痺れてツライのですよ」
這うような状態でリビングに当たる場所に何とか戻って来た亮二は足をマッサージしながらシーヴにお茶を持って来るようにお願いした。
「なにしたの?じゃ無かった、どうされたんですか?リョージ様」
言葉遣いを慌てて直したシーヴに苦笑を浮かべながら亮二は説明を始めた。
「メルタさん用の武器と防具を作ってたんだけど、お金がかかり過ぎてるって怒られて2時間説教コースだったんだよね」
「そうなんですか?私だったら自分の為に作ってくれるご主人様なんて嬉しいですけどね。ちなみにどの位かかったんですか?」
「だろう?メルタさんも喜んでくれると思ったんだけどな。ちなみに金貨250枚位?掛かってる」
余りにサクッと金額の話をした亮二に「そうなんですか…」と流しそうになったシーヴはギョッとして亮二を見つめた。
「き、金貨250枚?武器と防具の値段だけでですか?魔道具を買われたんじゃなくてですよね?」
「魔道具も何個か買ったけどシーヴの反応を見てるとちょっぴり高かったかな?」
気楽な感じで「高い物買っちゃた」と言わんばかりの亮二の態度に眩暈を起こしそうになりながらもシーヴは武器防具の相場を教え始めた。
「いいですか、まず短弓の値段は銀貨5枚位で、防具は買えない人もいるって感じかな。買えても銀貨1枚も出せたらいいんじゃないですかね?冒険者ってそれ位にギリギリの状態に追い込まれてからなる職業なんだよ」
敬語が入り混じりながらのシーヴの説明を聞いて、なんか思ってた冒険者像と違うと言わんばかりの複雑な表情をした亮二にシーヴは苦笑を浮かべるのだった。
□◇□◇□◇
「でも結局、自重はしないんだけどね」
ドリュグル郊外に着いた亮二はメルタに武器防具を渡しながら胸を張って言い放つのだった。
「すでに用意して頂いた装備を拒否しませんし、喜んで頂きますが、素朴な疑問としてどの位の金額が掛かってるんですか?」
若干、諦め気味だが嬉しそうな顔で武器防具を受け取りながら問い質したメルタに、亮二は視線を合わせる事なく横を向くと「金貨250枚」と小さく呟いた。
「え?聞こえませんでした。短弓が金貨100枚と聞きましたから、全部で金貨110枚位ですか?」
「金貨250枚」
「え?えっ?気のせいか金貨250枚って聞こえましたけど?」
「だからっ!金貨250枚かかったって!だって、“ミスリルの服”と防御力を上げる腕輪でしょ、それに素早さを上げる靴を買ってきたら意外と高く付いてさ」
「いやーお父さん頑張っちゃたよ」と意味不明な言葉を言ってる亮二を呆然と眺めながらメルタは防具を見直してみた。
- これって間違いなくミスリルの服だよね。「防御の腕輪」も「素早さの靴」も名前だけは聞いた事がある一級品の魔道具で、どれも金貨50枚は下らないよね。金貨250枚って聞いたらビックリするような金額だけど、用意して頂いた装備の価値からしたら妥当だよね。でも、こんな大金を使って大丈夫なの?婚約の証として貰った魔道具とか合わせると金貨1000枚近く使ってない?リョージ様の財力って一体どれだけあるの? -
「ありがとうございます、リョージ様。私の為にここまでして頂いて感謝してもしきれない位です。頑張ってご期待に添えるようにランクをアップさせますね。一つだけ質問をさせて下さい。こんなに良くして頂いて言うのも心苦しいのですが、カレナリエンやシーヴ、私に下さった指輪や腕輪と今回の武器防具でかなりのお金を使われたと思うんですが、お金は大丈夫なんですか?」
「わからないけど、まだまだ大丈夫!」
メルタの最もな疑問に亮二は首を傾げてしばらく考えていたが、考えるのを諦めた爽やかな笑顔を浮かべて元気に言い放つのだった
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