第14話 職業登録作業 -無双するのも大変ですね-
亮二の周りを、先ほどの魔力属性検査と同じように静寂が包んだ。見学に集まっていた冒険者達の目には、なにが起こったのか理解出来ていないが、戦意を完全に失ってうなだれているバルトロメイン。そして、喉元に木剣を突き付けて無邪気に結果はどうと、言わんばかりの笑顔で目を輝かせながらカレナリエンを見つめる亮二の姿だった。結果を求められている事に気付いたカレナリエンは我に返ると、慌てて模擬戦の終了を告げる。
「それまでとします! リョージさんに戦士の適性があると判断しました。これで適性検査は終了とします。バルトロメインも有難うございました」
「よし! 魔法戦士の道が開けたって事だよね!」
「そうなります。魔法戦士になるには戦士から始めて、戦いの経験を積む必要があります。マルコから聞いてると思いますが、他に盗賊や狩人やポーターなどの適性検査も有りますが、どうされますか?」
(盗賊や狩人までする必要はないな。全部合格して、伝説を作るのもテンプレとしては良いけど、これ以上は面倒くさいし、やり過ぎると周りの冒険者に目を付けられるもんな)
すでに集まっている冒険者からは、間違いなく目を付けられている亮二だが、自覚が無いままカレナリエンに答えた。
「カレナリエンさん。適性検査はもういいです。魔法戦士を目指したいので、まずは戦士登録をお願いします。ちなみに別の日に、他の適性検査を受けることも出来るんですよね?」
「それは問題有りません。基本的に、冒険者志願の方達は職業を決めてから来られますし、普通は複数検査をされる方でも、一日で一職業を検査されます。
貴方が非常識なんですと、自然な感じで言われた亮二はマルコの方に近付くと、小さい声で問いかけた。
「やり過ぎ?」
「ああ、十分にな。もうこれ以上、目立ちようがないくらいに目立ってるが、必要以上に刺激しなくていいだろう。戦士になると決めたんだから、これ以上は自重しておけ」
模擬戦の結果を受け止める事が出来なまま、呆然としているバルトロメイン。自分のパーティーに加えようと考え始めている冒険者達を尻目に、マルコは亮二とカレナリエンを連れてギルドに戻った。
◇□◇□◇□
「では、改めてお疲れ様でした。これから職業登録をしてきます。リョージさんのタグをお借りしますね。登録作業が終わりましたら、今後の活動やランクの上げ方など、冒険者にとって必要な情報について説明しますので、しばらくお待ちください」
「始末書を作る時間もいるからな」
「うるさい! 黙れマルコ! 始末書じゃないって言っているでしょ! リョージさんから金貨三〇〇枚を借りて、お金の力で破損届けで済ますんだから!」
マルコのツッコミにキレ気味に返答したカレナリエンは、亮二からタグを受け取ると奥に消えていった。カレナリエンの後ろ姿を見送りながら待ち時間が発生した亮二は、疑問に思っていたた事をマルコに質問する。
「マルコに質問があるんだけど?」
「なんだ? 今後の冒険についてか?」
「それも聞きたいんだけど、素材の使い道について教えてもらえないかな?」
亮二の質問に、キノコのお化けの使い道の事だと理解したマルコは説明を始めた。
「キノコのお化けだよな? 基本的には、身体は乾燥させて市場で売ってるぞ。乾燥させると、縮んで保存が利く上に、料理と一緒に煮込むと味のレベルが上がるんだ。魔石に関しては、ちょっとした魔道具の材料にもなるから、ランクの低い冒険者の小遣い稼ぎになっている」
「じゃあ、あんまり大量に売ってしまうと、供給過多になってギルドの買い控えが発生する可能性があるね」
「相変わらず難しい言葉を知っているな」
亮二の話を真に受けると、イオルス神の加護を受けたアイテムボックスの中には、六〇〇匹以上のキノコのお化けが入っているはずである。討伐ランクHの魔物は依頼なしで買い取りを実施すると、ギルドとしては言っているしているにしても、一度に六〇〇匹以上もギルドで買い取ってしまうと当面の需要を満たしてしまう。場合によっては買取金額の減額、最悪は1週間程度の買取拒否が発生する可能性があった。
低ランクの冒険者にとっては数少ない収入源になるので、亮二が大量にギルドに捌いて買い取り拒否が発生してしまう。そうなると収入減少に伴う死活問題になり、低ランク冒険者から恨みを買う恐れ可能があるので避けたいところであった。
「じゃあ、商会に行って買い取ってもらうか。あそこなら王都に持って行く選択肢が有るからな。カレナリエン! 手続きが終わるのにどのくらいかかる?」
「え? どっか行くの? 1時間くらい後に戻ってきてくれるならいいわよ。それまでに準備を終わらせておくから。カルカーノ商会に連れて行くの?」
「ああ。リョージが、ここに来るまでに魔物を討伐してるらしくてな。ギルドで買い取りをするよりはいいだろ?」
「それはいいけど。本当に1時間経ったら戻ってきてね。手続も色々と有るんだから」
「分ってるって。遅れると始末書になったカレナリエンが無職になるからな」
「さっさと行きなさい!」
マルコが笑いながら伝えると、カレナリエンから怒りの声を上がる。その声を背に亮二を商会に連れてマルコはギルドのを出るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます