スポーツが僕たちを動かし続ける

鴨坂科楽

第1話 最強の滑り止め

現役東大生として、フィギアスケートで冬のオリンピックに出場する。


その夢のためひたすら受験勉強していると、母が部屋にやってきた。


「はい、お守り。これがあれば絶対に滑らないと言われているよ」


もう合格が決まったような気がしてきた。


ところがお守りが効くことはなかった。


滑り止めに受けていた大学に入り、スケートの練習と試合を必死にこなした。

最後の選考会となる全日本選手権の結果によっては、十分にオリンピックを狙える所にいた。


僕の番が回ってきた。

いつもの音楽が流れ始める。

体調は悪くない。


行ける!


そう思った時だった。


スケート靴の刃が全然滑らない。

頭が真っ白になる。


転びながら、あのお守りの意味がようやく分かった。

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