花咲く希望の明日へと

@aisaku_

< 驕主悉幕 おわりのはじまり >

 痛い。痛い。私は目を擦り、真っ赤になった視界を幾分か晴らす。頭が割れるように痛い。いや、実際に割れているのかもしれない。

 私は倒れた状態のままで顔を上げる。粉塵が晴れ、真っ黒な足が目に入り、それを辿っていくと、真っ黒な顔でこちらを向く人……人間かどうかは怪しいが。の全身が見えた。

胸元に髑髏の紋章が象られ、首をコキコキと鳴らしている。振り絞りながら私は声帯を震わせる。

 「誰……です……か」

 真っ黒な怪物はキュルキュルと謎の音を発し、突然流暢に日本語を話し出す。

 『あぁ、初めまして。私は、そうですねぇ……君らが、シュヴァルツって呼んでる者です』

 ばつ、と意識が途切れかける。

 赤一色に塗りつぶされた視界を、必死で瞬きをして晴らそうとする。

 バラバラ、とヘリの音が聞こえてくる。あの子は大丈夫だろうか。

 きっと大丈夫だ、と感じる。

 『しっかし往生際が悪いですねぇ。——人間って』

 表情がないはずのその顔は、醜悪な笑みをうかべているように感じられる。

 その指が、額に触れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る