#7 旅の楽しみ(感想)

 『19世紀の異端科学者はかく語る』電子書籍化にともない、カクヨム版は序文を残して削除しました。規約の関係でURL載せませんが、書籍版タイトルは『十九世紀の異端科学者はかく語る: ダーウィンの愛弟子ラボックの思想と哲学 -The Pleasures of Life-』です。


 電子書籍版を出したからといって、小説投稿サイトを軽んじるつもりはまったくなく、棲み分けしつつ執筆活動を展開したいと考えています。


 そこで、ここから先は、翻訳文を引用しながら訳者主観で「感想と解説」を投稿しようかと。


「翻訳者だって、ひとりの読者として感想書きたい!」


 そんな主旨で、好き勝手に語ります。


(※引用文は改稿前のもので、書籍版とは異なる場合があります)





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#7 旅の楽しみ(感想)

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 今回のテーマは「旅の楽しみ」です。




> 旅行(travel)という言葉は示唆的だ。

> これは労働(travail)、つまり過剰な労働の一形態であり、昔の「旅」がいかに困難だったかを強く思い起こさせる。しかし、今はどうだろう!




 19世紀は鉄道が発達したおかげで、昔よりも楽に遠くに行けるようになりました。今回は、旅にまつわるラボックの持論と、思い出について語っています。




> 機会があれば、旅をしない手はない。世界は見た者のものだ。


> 詳細で正確な解説を読んでも、地図や図面や写真をじっくり見ても、現実はまるで天啓のように私たちに迫ってくる。




 ラボックの話しぶりから推測して、ピラミッド、氷河、東洋、アルプス山脈をじかに見たことがあるようです。


 東洋の文化に、旧約聖書時代の家父長制度を重ねていたりと視点が面白い。


 ヨーロッパのメジャーな場所はもちろん、「ドイツのライン川とスイスのライン川の違い」など繊細な描写(長文)が出てきます。私は実物を知らないため、今回の翻訳はかなり大変でした。


 下記、少しうるっときた一節を紹介します。




> ロッキー山脈を科学的な任務で旅していたとき、年老いたフランス人の司祭に出会って驚いたという。

> 司祭は、話の流れで、自分がこの遠い地にいる理由を説明した。

> 「ここにいることに驚かれたでしょう。実は数カ月前、私は重い病気にかかり、ある朝、ついに意識を失いました。善良なる神の腕の中にいるのではと思ったとき、天使がやってきて『司祭よ、あなたが去った美しい世界はどうでしたか』と尋ねてきたように思いました。そのとき私は、これまでずっと天国のことを説いてきたのに、自分の生きている世界をほとんど何も見ていないと気づいたのです。そこで、もし神の摂理が許してくださるなら、この世界を見てみようと決心し、今ここに至っています」




 めっちゃいい話! それにしても、ロッキー山脈に高齢の司祭がいたらびっくりしますよね。


 なお、今回は最後のオチが秀逸。




> 旅の最大の楽しみは家に帰ることでもある。




 どうやら、ラボックは家に引きこもるのも好きらしい。

 次回のタイトルは『家庭の喜び』で、今回の『#7 旅の楽しみ』と対になる内容になります。

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