#2 義務を果たす幸せ(感想)
『19世紀の異端科学者はかく語る』電子書籍化にともない、カクヨム版は序文を残して削除しました。規約の関係でURL載せませんが、書籍版タイトルは『十九世紀の異端科学者はかく語る: ダーウィンの愛弟子ラボックの思想と哲学 -The Pleasures of Life-』です。
電子書籍版を出したからといって、小説投稿サイトを軽んじるつもりはまったくなく、棲み分けしつつ執筆活動を展開したいと考えています。
そこで、ここから先は、翻訳文を引用しながら訳者主観で「感想と解説」を投稿しようかと。
「翻訳者だって、ひとりの読者として感想書きたい!」
そんな主旨で、好き勝手に語ります。
(※引用文は改稿前のもので、書籍版とは異なる場合があります)
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#2 義務を果たす幸せ(感想)
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第一章の「幸せになる義務」と対比的な「義務を果たす幸せ」とは。
できれば原文を読んで欲しいので、ここでは多くを語りませんが、著者ジョン・ラボック流『19世紀の君主論』のように感じました。
個人的に刺さった文章を引用して紹介します。
> 君主は天体のようなもので、崇拝されることはあっても休息はない。
> 人はときどき、完全に自由になれたらどんなに楽しいだろうと考える。(中略)
> いわゆる快楽や自己満足のための人生は、本当の幸せや真に自由な人生ではない。それどころか、ひとたび支配に屈して自分自身の道を譲り始めると、最も耐え難い圧制の下に置かれることになる。
> その他の誘惑も、ある意味では飲酒の誘惑に似ている。
> 最初は楽しく感じるかもしれないが、杯の底には苦みがある。
> 人は、以前の耽溺によって生じた欲望を満たすためにまた酒を飲む。
> 他のことでもそうだ。繰り返していると、やがて喜びではなく渇望になる。
> 酒に抵抗することはますます苦痛になり、最初はおそらくわずかな満足を与えてくれた降伏も、すぐに喜びを与えなくなり、一時的に安らぎを得たとしても、やがて嫌悪そのものになる。
> こうなると、抵抗することは困難となり、屈服することも苦痛である。
> 自制心の扱い方は、最初は難しくても一歩一歩簡単になっていき、次第に楽しくなる。(中略)
> 元気な馬に乗ることは多少の力や技量が必要かもしれないが、古ぼけた馬車でのろのろと
> 前者では、意思を持った生命力の自由で手応えのある弾みを感じ、後者では、鈍くて生気のない奴隷を駆り立てなければならない。
> 自分自身を支配することは、現実には最大の勝利である。
> トーマス・ブラウン卿は「自分自身の君主である者は、地上の神や王冠をかぶった者が受ける栄光をうらやむことなく、満足げに自分の王笏を振っている」と語っている。真の偉大さとは、地位や権力とはほとんど関係がない。
心に留めておきたい格言がたくさんある!
もっと紹介したいけど、キリがないのでこのくらいで。
上記は啓蒙的なメッセージでしたが、文学的な一節もいくつか。
> 若くして死んだ人間が天空の広間に入ってきた。
> そこには神々が座っており、彼は神々と二人きりになる。
> 神々は彼にギフトと祝福を与えて、玉座へと手招きする。
> しかし、神々と彼の間にいきなり幻想の吹雪が出現する。
> 彼は自分が巨大な群衆の中にいると感じ、群衆に従わなければならないと思い込む。狂気の群衆はあちこちに走り回り、あっちへこっちへと揺れ動く。
> 彼を翻弄する幻想の正体は何か?
> 彼は流されるままに生きてきた。
> 死後、どうして自分で考えたり行動したりできるのだろう。
> 雲が持ち上がり、そこには神々がまだその玉座に座っている。
> 神々は彼と二人きりだというのに。
> 人は隠れ家、田舎の家、海辺、山などを欲しがる。あなたもまた、そういうものを非常に欲するだろう。しかし、これは、最も一般的な種類の人間の「しるし」といえる。
> なぜなら、あなたが選ぼうと思えばいつでも、自分自身の中に引きこもることができるからだ。自分の魂の中ほど、静かで、悩みから解放される場所はない。特に、自分の中に考えがあり、それを見つめることですぐに完全な静寂に包まれる場合はそうだ
> 自分の魂にそのような聖域を持つ者は、実に幸福である。
ちなみに、第二章で一番好きなやつはこちら。
> 私の魂が飛び立つのを見ても怖いと考えないで。
> 死すべき運命の暗い門をくぐり抜けよう。
> 人生が真実ならば死は怖くない。
> 死を恐れるものは、病みながら生きているからだ。
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