#1 野心(1)
名声は、クリアな
(高貴な
喜びを軽蔑し、面倒な日々を送るために
——ミルトン
***
もし、名声(fame)が高貴な精神の最後の弱点だとしたら、野心(ambition)はしばしば最初の弱点である。しかし、適切に導かれれば、それは美徳への微かな助けにはならないかもしれない。
キケロは次のように語っている。
「私が若い頃に、多くの教訓と多くの書物から『栄光と美徳は最愛のものでなければいけない、いや、人生における唯一の願いであるべきだ』というこの真理に酔いしれていなかったら。これらを達成するために、死と追放の危険をともなう肉の苦しみは軽蔑されなければならない。あなたを救うために、これほど多くの出会いと、悪しき人間との戦いの日々の中で、自分の人格をさらけ出すことは絶対にしなかっただろう。だが、この点について、私の頭上では、古代の事例と書物に残された賢者の声に満ちている。
ある詩人は次のように語っている。
「多数が失敗し、一人が成功する」 [1]
しかし、これはほぼ真実ではない。
期待通りではないかもしれないが、成功に値する人はすべて成功する。
名誉ある敗北は卑しい勝利にまさるものであり、
成功できないかもしれないが、だからといって、志を立ててはいけない理由にはならない。
モリスは「私は知っている」と語っている。
「高い失敗は、低い成功の境界線に重なっている」
そして、ベーコンは、「もし、人が鋭く注意深く見るならば、幸運を見ることができるだろう。彼女は盲目だが、見えないわけではないからだ」と語っている。
成功の見込みを上げるには、自分が何を達成したいのかを自覚し、機会を最大限に活用しなければならない。中でも、時間の使い方はもっとも重要だ。
オリバー・ウェンデル・ホームズは、「時間を行動で埋め尽くさずにどうするのか」と問いかけている。
ナポレオンは次のように語っている。
「モンテベッロの戦いで、ケレルマンに八百頭の馬で攻撃するように命じ、彼はこの馬でオーストリア騎兵隊の目前でハンガリー擲弾兵六千人を引き離した。この騎兵隊は半リーグ離れており、戦場に到着するまでに四分の一時間(十五分)をかかった。戦いの運命を決めるのは、どんな時でもこの十五分だ」
この教訓は、人生の戦いも含まれるだろう。
また、野心を叶えるには他の方法も惜しんではならない。
「不死身の名声を得るために戦うことを考える者は、実際に戦わなければならないし、命を気にかけることもない」[2]
その上、戦いの興奮の中で、本来なら激しい苦痛をもたらすであろう傷や打撃に苦しむことも、比較的少なくて済むだろう。
目標となる対象物をよく見定め、できるだけリスクを少なくし、コストを慎重に計算するといい。しかし、いったん決心したら、後ろを振り返ってはいけないし、労を惜しんではいけないし、危険を恐れてもいけない。
「自分の運命を恐れすぎているのか、
または自分の器量が小さいのか、どちらかだ。
すべてを手に入れるか失うか、
勝負に出る勇気がない」[3]
栄光について、ルナンは次のように語っている
「結局のところ、栄光とは虚栄心のみではない可能性が高い」
しかし、栄光とは何だろうか。
マルクス・アウレリウスは次のように語っている。
「蜘蛛はハエを捕まえたときに、人間はウサギを捕まえたときに、または網で小魚を捕えたとき、イノシシ、クマ、サルマティア人を捕まえたときに誇らしく感じる」 [4]
(※)サルマティア人:紀元前4世紀から西暦4世紀にかけて、ウラル南部から黒海北岸にかけて活動したイラン系遊牧民集団。
これは、ある観点から見て「名声の虚栄心を示している」としても、その目的が妥当であれば「誰でも成功する可能性がある」という証拠でもあり、私たちを勇気づけてくれる。
アレキサンダー大王は、典型的な野心家のひとりかもしれない。
彼の願いは征服することであり、継承することや統治ではなかった。
父フィリッポスがどこかの町を占領したとか、戦いに勝ったという知らせを聞くと、彼はそれを喜ぶどころか、仲間に「父は征服を続けるだろう。私たちにできる特別なことがなくなるまで」と言ったものだった。[5]
アレキサンダー大王は世界をひとつに征服できなかったことを考えると、星の数に悔しさを感じていたと言われている。このような野心は、当然ながら失望する運命にある。
哲学者たちは野心の虚栄心について、一般的に、アレキサンダーを典型的な類型と見なして、「自己を高める観念のみで、他人の幸福も苦しみも気に留めない」という理由で、価値がないと指摘している。
ベーコンは「日常が落ち着かなくなるほど、幸運を求め続ける」ことについて、「もっと注目すべき崇高な人間たちに、多くの時間を浪費させる」とし、さらに「いかなる人の私財も、その存在に値する目的とはなりえない」と語っている。
ゲーテの次の言葉は、人間をよく観察している。
「人の存在目的は文化のためにある。自分が何を成し遂げるかではなく、自分の中で何を成し遂げるかだ」[6]
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