第45話帰宅
そうしていると7時になり、帰る準備をして帰路につく。
「途中まで一緒に帰ろ~!!」
「苦しいよ、梨乃ちゃん」
高田さんは明美に抱き着いていてそう言うと、彼女は呆れたように言葉を返す。
とはいっても、駅まで僕らが付いていくだけなのだが。
僕らは徒歩だ。
理由は特にないが、明美が歩いて行って電車賃をもらうという算段だった。
両親には当然反対されたらしいのだが、僕と共ならという条件で説得して許されたのだ。
明美曰く、お金をかけるべき所と無駄遣いは違うとのこと……。
そこに僕の意志はないのかと突っ込みたいところではあるが、明美には世話になっているので言えなかった。
「まさくん、いい?」
「あぁ、構わないぞ」
明美がこちらに同意を求めるようにそう言うと、にこりと笑う。
そのやり取りに高田さんは交互に僕らを見る。
「……保護者?」
確かに、やり取りからすると子供に聞かれた親のやり取りに見えなくもない。
「真田さんはお前と違って相手に遠慮できるタイプって事さ」
近くにいた才人が高田さんにそう言い放つと、彼女は不満そうに頬を膨らませる。
「それ、どういう意味?」
「だって傍若無人の何でもはっきり言うお前と違って……ぶへぇ!!」
鳩尾に綺麗に高田さんの拳が入り、才人は倒れる。
「ふん、行こう?」
そう言って明美の手を握ると、先に教室を出て行く。
「今のは、お前が悪いよ」
あの攻撃だと、しばらくは動けないだろう。
才人の回復を待ち、僕らは校門に向かう。
2人の元へ向かうと、声を掛けられていた。
「遅いよ、二人とも」
そう言って彼女は明美と共にこちらに寄ってくる。
勧誘でもされていたのか、少し面倒臭そうだった。
「お前な~、直ぐに暴力に走るのはやめろって」
「……もう一発いっとく?」
そう言って彼女は拳を作り、笑いながら才人の方を見る。
才人はその光景に僕を盾に後ろに隠れる。
「やれるもんならやってみろ!!」
後ろに隠れながら言うなよ……。
「もういい、行こう明美ちゃん」
そう言うと、高田さん・明美の後ろに僕・才人の状態が出来上がる。
「なぁ、ぶっちゃけ明美ちゃんとどうよ?」
「どうと言われても、只の幼馴染だよ」
「つってもあんだけ可愛いくていつも一緒に居るんだ……向こうも悪くないと思ってるんじゃないのか?」
「そんなこと言ったら、高田さんとはどうなんよ?」
正直、高田は関わる人をはっきり選ぶ人の様に思える。
本当に嫌いな相手とは関わらないようにする性格だろう。
「あいつと? そんなことあると思ってるの?」
「なくはないんじゃないか? 高田さん、いい子そうだし」
正直、美人で活発系少女を嫌いな人間はいないと思う。
「いい子があんなに暴力振うか?」
「それは、君が逆鱗に触れるからだろ」
殴られている場面を思い返しても、明らかに才人が悪い。
「それに明るくて元気そうな子はモテるよ」
「まさか、狙ってるのか?」
「いや、そういう事じゃなくて高田さんクラスで人気になってるんだよ……活発で可愛いって」
「へぇ~、あの暴力ゴリラがね~」
「それ、聞かれたらまた殴られるぞ」
そんなことを言っていると、駅に着く。
「それじゃあ、明美ちゃんの事よろしくね~」
そう言うと、二人で駅の中に入っていった。
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