第11話 例えば、イルカのショー ・・・

イルカが尾びれで立ち泳ぐ。

イルカがジャンプ!

ボールを口先でポーンと突いて、

着水。

またジャンプ! そして飼育員の持つ輪っかをくぐる。

どれもこれも指示されて。

来る日も来る日も飛んだり跳ねたり。


ある日、イルカは思いっきり空中のボールを突き飛ばした。

つないでいたひもが切れて、ボールは飛んでいった。

フェンスを超えて、プールと隔てられたすぐそこの海へ向かって。


───飛んでいっておくれ、

   ボクの代わりに───


飼育員は大あわて。観客たちには大ウケ。


透明な壁で仕切られた向こうは別世界。

小さな子供が壁にくっついてイルカを眺めてる。

イルカはその子に近づいて、しばらく眺めると、

プックリと頭の穴から輪っかを出した。

身をくねらせて、その輪っかに口先を突っ込んだ。

輪っかはふわっとほどけて散り散りになった。

誰にも指示されてないのに。

小さな子は笑ってる?

喜んでるのかな?

イルカにはわからない。


また今日も、たくさんの人の前で、飛んだり跳ねたり。



レプたちが見物している。

人間が小さなイルカを使いこなしているつもりになって、

芸だと思う芸をさせているのを。

そういうのも、人間に仕込んだ芸の一つ。

他にも色々。

論争したり、歌ったり、踊ったり、

事故や事件を起こしたり、

病気になったり、戦争したり・・・

『地球』という競技場で、

どの陣営が勝つか、賭け事に興じたりして、

見物レプは大盛況。


今日もレプたちは楽しんでいる。

人間のショーを。


宇宙の皆様、

ようこそ、統合型地球リゾートへ!

『カジノ』もありますよ!



                 ─── END ───








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