めっちゃ短いショート・ストーリー・よしなし事をもろもろに

龍月小夜

第1話 ミステリーと雨 ・・・ ♪ Mystery Train ♪

夜───。

夜行列車のコンパートメント。

私はひとり。

真っ暗な窓ガラスに流れる激しい雨粒を聞きながら、

一編のミステリー小説を開く。


探偵登場───!


いきなりか?

まだ何の事件も起こってないのに。


ひとり現れた探偵は、事件を探して街を歩く。

どうやら当分、メシのタネにはありついてないらしい。

貧乏探偵か・・・。


人殺しぃ───!


探偵はいきなり現場に出くわす。

逃げ去る人影、

倒れているひとりの・・・


にゃんこ!?


いや、

にゃんこのそばに、血まみれの女の姿が───!


うっとフリーズする探偵をよそに、

にゃんこは女に近寄り、

胸に突き立ったナイフから流れる血を


ペロ、ぺロ・・・


化け猫かぁ!?

「大阪ぁ、大阪ぁ・・・」

突然の車内アナウンスが・・・

やばい! 降りなあかん!


私は大あわてで散らかった荷物をかき集め、

列車から飛び出した。


無事にホームを去って行く列車を見送る。

まだ雨は降り止まず・・・

夜はまだ深い。


歩き出そうとして、気がついた。

あのミステリー小説を忘れてきたことに。


あの小説はミステリーなのか、それとも

ホラーに変貌していこうとしているのか?

中途半端に、物語は私の前から去っていく───。


とあるコンパートメント。

忘れられたミステリーな客を乗せたまま、

ミステリーとレインは終着駅へと向かう。


             ─── END ───

 

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