お姉ちゃんと二人の夜

 ボクの部屋は、ガラスが割れて散らかっているので、今日はお姉ちゃんの部屋で眠る事になった。


「カリンさん。……大丈夫かな」


 性懲りもなく、ボクはカリンさんの事を考えていた。


「お人好し」


 頬を抓られる。


「だって、……初めて、できた友達だから」


 カリンさんの今までの日々が嘘だったのか、というと、ボクにはそうは思えなかった。


 たぶん、全部がカリンさんの一面だ。

 身近な存在で言うと、お姉ちゃんや安城さんの意外な所をたくさん見た。


 それと同じで、ボクが知らなかっただけなんだ。


「今ごろ、安城に慰められてるでしょ」

「うん」


 ボクは自然とお姉ちゃんの胸に顔を埋めた。


「元気に、なるといいな」


 あの後、ずっと拗ねたように黙っていて、心配だった。

 安城さんに抱きしめられている間、涙を流した痕まであった。


「初めてではないでしょう」


 きっと、以前だって、ああやって泣いたんだ。


「……うん」

「寝るわよ」

「おやすみ」

「……ふふ。よし、よし」


 頭を撫でられ、ボクは目を閉じた。

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