フォークダンス

 お昼が終わってからは、大玉送りをやった。

 クラスで活発な人達が大きな玉を転がし、あらぬ方向へゴロゴロ転がっては、周囲の観客で爆笑が起きていた。


 全員ではないので、ボクは観戦。


 それからは、ボディビルドの種目があった。

 これは完全に受けを狙った種目だろう。


 野球部とラグビー部、空手部の面々が台に立ち上がり、様々なポージングを取る。


 その度に、こんな声が上がった。


「きっしょ」

「なにあれぇ」

「……私は好きだけどね」


 女子達の受けは、いまいちだった。


 そして、これらの種目が終わるころには、14時になり、最後の締めとしてフォークダンスを踊ることになる。


 このダンスは先生たちを中心に踊るだけ。

 参加する人は結構いたが、別に参加しなくてもいい種目である。


 周囲に立って、観ているだけの人はいたし、ボクもその一人だ。


 不思議なことに、興味がないフォークダンスが始まると、「終わったなぁ」という気持ちになっていく。


「レン」


 と、後ろから声がした直後に、横からも声がした。


「レ~ンくんっ。踊ろ」


 カリンさんだった。

 まだ返事をしていないのに、強引に腕を取られ、ボクは輪の中に混ざっていく。


「ぼ、ボク、踊れないよ」

「へーき、へーき。こんなの、手を繋いで揺れてればいいんだよ」

「……そうなの?」


 両手を繋ぐ恥ずかしさはあったが、手を握られ、見様見真似でボクはぎこちないステップを踏む。


「こ、これでいいのかな」

「そうそう。上手いじゃん」

「えへへ。そ――」


 カリンさんと立っている場所を入れ替える間際だった。

 ボクの視界には、お姉ちゃんが映った。


「――……ッ……――」


 一瞬だったけど、脳裏に焼き付いた。

 犬歯を剥き出しにして、鷹のような目で睨みつけるお姉ちゃん。

 カリンさんはもちろんのこと。

 ボクのことも睨みつけていた。


「ねえ。レンくん」

「え、うん?」

「今日さ。放課後、残ってよ」

「あ……」


 告白だ。

 返事を聞かせろ、という事なのだろう。


 ボクはとっくに返事を決めているので、すぐに頷いた。


「へへ。じゃあ、裏庭で」

「……うん」


 お姉ちゃんはもういなかった。

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