おねえちゃんが考えていること

 今日は三人で寝た。

 ボクは目を閉じているけど、二人が何やら話をしていたので、聞き耳を立てる。


「安城。あなた、レンの股間に執着するけど。欲求不満なの?」


 敵に対してストレートな物言い。

 最近、お姉ちゃんは安城さんに対して、以前より遠慮がない。


「いえ。これでも、性欲は薄い方ですよ。普通の男性を見ていると、死を願うくらいには嫌気が勝ちます」

「……極端ね。その割には、随分と発情してるわ」

「レン様だからです。ランは性的な興奮を覚える悦びをほとんど知りませんでしたので」


 前に、風呂場で話していた気がする。

 本当は女の人が好きだと言っていた。が、訳があって、男女どちらも嫌いになった、と話していたのを思い出す。


「なので、ランはこの興奮が愛しいのです。レン様の蒸れた股間の臭いだけで、もう、……濡れています」


 反応に困った。


「ケイ様は、性欲が強いのでは?」

「ふん。あたしをその辺の淫売と一緒にしないで」

「でも、……以前はレン様の着たワンピースを嗅いで、一人で……」

「な、ちょ、どこで見てたのよ!」

「声がうるさいんですよ。廊下で掃除していただけなのに、アンアン喘いでたではないですか」


 そ、そうなんだ。


 最近、お姉ちゃんの知らない一面ばかりを見せられているので、以前とは違い、一人の女として意識していた。


「あたしは、弟が望むなら……」

「目の前でも、できるんですか?」

「の、望むなら、……しても……」

「えっちですね」

「あなたね」


 お姉ちゃん達の会話を聞いていると、いつも股間が苦しくなる。

 何とも思っていない人なら、ともかく。

 二人とも、こんな会話をしているけど、住む世界が違うほどの美貌だ。


 こんな二人に、いつも変な事をされて、男として何も反応しない訳がなかった。


「堤とかいう女。絶対に裏の顔がありますよ」

「ええ。同感ね。あなたと同じ臭いがするもの」

「……失礼ですね」

「あんな女にくれてやる理由はないわ。夏になったら、レンと海に行ったり――」

「ランと山へ行き――」

「一緒に花火を見て――」

「陰でランとイチャついて」


 勢いよく、お姉ちゃんが起き上がる。


「人の計画に入ってくるな!」

「うるさいですよ。もう寝ましょう」

「何なのよ。もう!」


 再び、お姉ちゃんが床に就き、首に腕を回してくる。

 反対側からは吐息が掛かっていた。


「えっち以外にも、楽しい事をいっぱいしたいわ」

「それは同感ですね。ランも、一緒に行きたいところがあります」


 二人は笑った。

 とても不敵な笑いだった。

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