月日が経って、高校生

 ボクが藤野家に越して半年余りが経った。

 無事に高校入試が終わり、晴れて高校生となった。


 あれから、安城さんとの間に、変なことは起こらなかった。

 それどころか、勉強を教えてくれたのが安城さんなので、今では感謝しかない。


 熱を出した時には看病をしてもらった。

 登下校での車の送迎はもちろん。

 シズカおばさんと一緒に、母代わりとして、全部やってくれている。


 そして、ボクは私立の学校に通うことになった。


 お姉ちゃんと同じ学校だ。

 シズカおばさんは、一抹の不安を抱えているようだった。


 入学式から、半月が経過して友達ができた。

 送迎の車から降り、校門を潜ると、肩を叩かれる。


「よっ」

「堤さん。おはよう」


 つつみカリン。

 同じクラスの女子で、ボクの友達。

 耳を出したセミショートの髪をしていて、活発な雰囲気が特徴の子だ。


 他に特徴といえば、日に焼けた肌か。

 水泳部に所属したらしく、中学生の時には大会で好成績を収めたらしい。


「今日もかったるいね」


 鞄を振り回し、並んで歩く。

 地元から離れた場所にある学校は、とても新鮮な気持ちだ。


「そういえば、レンは部活入らないの?」

「う~ん。部活、かぁ」


 中学の時には帰宅部だった。

 高校になって、いざ部活を始めようかと考えてみるが、良い所が浮かばない。


 高校の部活は、正直な話、敷居しきいが高いのだ。


 たいていは中学の時から部活をやっていて、高校でもやるといった流れで、ボクのように何もしていなかった人間は、入部となると億劫おっくうになる。


「ケイ先輩と同じで、美術部とか」

「いや、美術部は、ちょっと……」


 実を言うと、ボクは未だにお姉ちゃんが苦手だった。

 むしろ、安城さんの方が相談しやすいくらいだ。


「だよね。美術部って、ちと根暗っぽいもんね」

「はは……」


 美術部の人が聞いたら、怒るだろうな。

 こんな感じで、堤さんは悪気がないのに、余計な事言ってしまう。


「もし、よかったら、水泳部に来なよ。未経験者歓迎だからっ♪」


 僕にはハードルが高い勧誘だった。

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