016 夫婦トンビがゆったり舞う空の下で
◆2023年1月29日
すっかり穂がほうけ、葉枯れたススキを、地際で刈りとっては抱え運んでました。
ノコギリ鎌での作業ははかどりませんが、それでも少しずつ海が見えだします。
沖まで波頭ひとつない海原の手間なしぶりったら……。
なのに、ここはススキ原になっちゃったと、あらためて思い知らされます。考えちまいます。梅雨までに、大株だけでもなんとか根ごど絶やせるかしら。
空もさっぱり広々、手間要らず。ああ、なんてうらやましいこと……。
嘆息で一休みしてたら、トンビの夫婦が頭上へゆったり旋回して来ました。
このあいだは一羽きりだったのでちょっと心配したから、つかず離れずの睦まじさにしばし見とれます。
反して悠然と翼を広げながら滑空する彼らに、これしきの悩みで地面にへたってる私はどう映ってるやら。
人間の8~10倍はあるという視力に見下ろされた姿は、海月山に生息する小動物以下の活力さえ発しちゃいないんだろな。
それともまさか、彼らの好きな開けた場所 にはびこりだした ススキを、いずれ一掃してくれる間の一休みとでも?
運んだススキを私は、霜で花茎が折れ曲がった木立アロエに振りかけました。
炎の色に燃えさかってた花穂はしなびてたものの、たくましい茎葉のほうは今回の大寒波を無事に過ごしてたからでした。
そんな後ろめたさでたっぷり刈り葉を被せ、仕上げに防風ネットでおさえた──。
そこまでの一連の作業に午前中かかりながら、ススキはまだまだ刈り残しが。
こんな体たらくでは、来冬へとさらにはびこるだけのこと。
昼になったと軽トラに戻り運転席にへたりこんだら、疲れて15分も眠けに襲われちまいました。
泰然と高空を舞うトンビ夫婦には、見られたくなかった一日ではありました。
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